KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。
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夜半、琴里は食堂にいた。
眠れなくて部屋を抜け出したは良いが、外は雨で天候不良なので行けなかった。
一人でいたい気分だったので普段は誰かしら呑み明かしている食堂に行くのは気が進まなかったのだが、この日は誰もいなかった。
夜目の利く琴里は灯りをつけず、真ん中のテーブルで伏せる。
眠いわけじゃない、ただ、起き上がっているのがしんどかった。
ここ数日、楽しいことがなかった。
いつもならなんでも楽しくてうきうきしてしょうがないのに。
マルコに会っても、嬉しくもなんともなかった。
それよりも、なんだろう、くるしい。
ふと、灯りが視界をちらついた。
顔をあげると、誰かが食堂へ入ってくる。
「誰だよ…って、コトリか。灯りくらいつけろよなー」
ランプを持って食堂にやってきたサッチは、琴里の前に座ってランプの灯を強めた。
ぼんやりと照らすランプの明かりは、琴里には少し眩しかった。
「サッチだ」
「おう、俺だぜ」
「どうしたの?お腹すいたの?」
「いや、ちょっと喉が渇いてな。お前こそどうしたんだよ、腹でも減ったか?」
ううん、と首を振り、琴里は笑ってみた。
「ぶっさいくに笑うんじゃねーよ」
「やっぱり笑えてない?」
「笑顔っつーのは無理してやるもんじゃねぇよ。待ってな、ホットミルク作ってやる」
キッチンへ歩みゆくサッチの背を見ながら、琴里は視線を落とした。
笑ったら少しは楽しい気分になるかと思ったけど、笑えてないらしい。
笑顔の作り方も忘れてしまったのか。
もう、どうやって笑ってたのか、どうして何が楽しくて笑ってたのかわからない。
それさえもわからない。
またぼんやりとしていたら、サッチがホットミルクの入ったマグカップを二つ持って戻ってきた。
ほらよ、と差し出されたのを受け取ると、掌がじんわりと温かい。
「ありがとう」
「ん。それよりどーしたよ、お前、夜はいっつも寝てんじゃねぇか」
「最近寝れない」
「………さんざん聞かれてると思うけど、なんかあったか?」
「わかんない。琴里もね、考えてるけどわかんないよ」
湯気の立つマグに口をつけて、ミルクを飲む。
温かくて甘い。
サッチはいつも蜂蜜を入れて甘くしてくれる。
「いつから、そうなった?」
「いつだろう、島…こないだの島までは、いつも通りだったような気がする。エースとね、色々見て回ったりした」
「島で、エースとなんかあったか?」
「ううん、なんもなかった。楽しかった、エースケチだった」
思い出す、ついこの間のことを。
「島で何をした?何を見た?何があった?」
「最初の日、色々見て、次の日エースと一緒に見て回って、次の日から部屋にいた」
「エースと一緒にいた日のことを、よく思い出せ。んで、最初から最後まで全部言ってみろ」
目を閉じる。
エースの部屋で寝て、起きて、朝ご飯を食べて、エースと一緒に島へ行って、雑貨の店をのぞいて、出店でアイスを食べて、食べ物屋を回って、そして。
「マルコに、会った」
2010/10/01
サッチは面倒見のいいおにーさんだと思うんだ。
さて、やたらエースが出てくるな^^^^^^^^^^
お前ちょっと自重しろ^^^^^^^^^
「コトリ、どうかしたかよい」
「んーん、なんもしないよ」
モビー・ディック号は再び大海原を突き進んでいた。
最近琴里は暇な時甲板に出てぼんやりしていることが多くなった。
この日も甲板で手すりにもたれてだらりと海を眺めていたら、マルコが横に来た。
琴里はちらりとマルコを見て、また視線を海に戻す。
平然と、漫然と、緩慢に。
「……………………」
「……………………」
マルコも琴里の隣に行き、同じように手すりにもたれた。
二人でいても、会話が続かない。
普段なら琴里が意気揚々と色々な事を話しだすのだが、今日は、最近はそれがない。
それどころか、一人でおとなしくしていることが多くなった。
誰かと談笑してる姿も、飛びついて困らせている姿も、笑っている姿をみなくなった。
「なんかあったか?」
「なんもないよ」
答えるときも、相手の顔を見ない。
「琴里、掃除当番だからもう行くね」
2010/09/30
「どうした」
「わかんない」
琴里はエドワードの上でだらけていた。
この船に来た時と比べれば随分と大きくなった琴里だが、それでもまだまだエドワードの方が大きい。
すっかり琴里の定位置の一つとなったエドワードの腹の上で、琴里は眠るでもなくただぼんやりと横になっていた。
エドワードが喋るたびに上下する腹の上は、温かくて安心する場所だった。
「わかんねェのか」
「うん。わかんない。琴里、どうしちゃったんだろう」
目を閉じて思考をめぐらせようとしたけれど、うまくいかない。
考えようとしても、何を考えていいのかわからない。
どうしたのかと自問自答しようにも、問題すら思いつかない。
頭がどろりと溶けてしまったみたいに、ぼんやりする。
「お前が元気ねェって、みんな言ってるぞ」
「そっか。心配かけちゃった」
「俺も、心配してる」
ごめんなさい、小さくつぶやいた。
元気がないというよりも、いつもの調子が出ない。
こんなこと初めてだ。
琴里自身も戸惑っている。
でも、どうやったら前みたいに振舞えるかわからない。
心配させているのはわかっている。
わかっているけど。
「わかんないよ、親父様」
琴里は泣いた。
静かに泣いた。
2010/09/26
「何を買ってもらおうかなっ!」
「言っとくが俺はビンボーだかんな!」
「ふっ、ツケといてやるぜ…」
楽しげにはしゃぐ琴里を見て、エースは一安心していた。
どう考えても、昨日の琴里は元気がなかった。
今朝も気持ちが悪くらいおとなしく、おかしかった。
無理やり外に連れ出したのが功を奏したのか、外に出た琴里はいつもどおりに明るかった。
街道を駆ける琴里のどこにも、憂いは見られない。
エースが見る限りは、いつもどおりだ。
「エース、あそこのアイス美味しそう!」
「自分で買えよ?」
琴里は元気なほうがいい。
うるさくて、馬鹿で、明るくて、はしゃぎまわってこその琴里だ。
「はいっ!エースの分!!」
「金はださねぇぞ」
「琴里はやさしーから!あげる!」
眩しい笑顔。
受け取ったアイスは、いちご味だった。
*
「そんでねぇ、そこのサンドイッチが美味しかった!」
「食いもんばっかだな」
「おうともよ!あ、マルコだっ!!」
談笑していたら、前にマルコが歩いているのが見えた。
琴里がマルコを慕っているのはみんな知ってる。
もちろんエースも知ってる。
琴里はマルコが好きで、マルコも琴里が好きだ。
マルコの好きは恋慕の情。
ただ、琴里のそれが恋愛か親愛か友愛なのかは知らない。
そういえば、琴里は誰かに恋をしたことがあるのだろうか。
白ひげ海賊団の箱入り娘は、俗世を知っているのだろうか。
「わーい、マルコっ!」
琴里はいつもどおり、マルコに抱きついた。
マルコもそれを受け止める。
エースはそれを見ている。
エースは主人公のことが好きですが≠愛情
ルフィを可愛がるような、妹を可愛がっているのと同じです。
2010/09/27
なんかエースは主人公のこと好きっぽいなぁwww
ただ単に、本当に、兄として弟として心配してるだけです。
主人公→マルコ の関係をエースは親子だと認識してます。
マルコ→主人公 の関係はちょっと考えあぐねています。
マルコは主人公を好きっぽいけど、恋愛感情じゃなくて庇護加護守護的な、親子愛かもしれないと思ってます。理由はマルコが主人公をやらしー目で見ないから(笑)
マルコ視点を書いていないのですが、マルコはマルコで腹の中で悶々としてます。表情に出さないだけで、成長したなとかきっと父親だと思われてるんだろうなぁとか今はまだこのままでとか。
目が覚めた。
知らない部屋だった。
そういえば、エースの部屋だった。
琴里が起きあがると、無理な体勢で寝てしまっていたせいで首が痛かった。
きょろりと部屋を見ても、エースはいない。
昨日の夜部屋を出ていったのか、琴里が起きる前に出ていったのかわからない。
一緒に寝ればよかったのに、と思った。
琴里は一緒に寝たかった。
誰かと一緒にいたかった。
だから自室じゃなくてエースの部屋を訪れたのに。
もう一度ベットに寝そべれば、エースの匂いがした。
*
「おはよう」
「おう、起きたか」
「起きた」
朝食を食べようと食堂へ行けば、エースがいた。
人はまばらで、そういえば島に停泊している事を思い出した。
みんな出掛けているから人がいないのか。
朝食昼食夕食だけは幾らかの調理人が交代で作り置きしている物があるので、それを自分で取る。
時計を見たら、いつもの朝と変わらない時間だった。
いつからいるのか、エースの前には空になった皿が並んでいた。
琴里はジュースだけ注いでエースの前の席に着く。
「そんだけか?」
「うん。おなか減らない」
ジュースに少し口をつけ、テーブルの上で頬をつく。
「エースは島に行かない?」
「や、お前も起きたし今から行く」
「そっか」
「なに、行かねぇの?」
考えてなかった。
琴里は少し考えて、行かないと肯いた。
「昨日見たし、もういいや」
「一緒に行かね?」
「なんか買ってくれる?」
「昨日ベット貸してやったの誰だよ」
「エース。毎日海からエースを引き上げたのは誰?」
琴里の勝ち。
島に行くつもりはなかったけれど、エースと一緒ならいいかと思った。
誰かと一緒にいたい。
誰かと、誰と…?
2010/09/26