KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。
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「コトリ、どうかしたかよい」
「んーん、なんもしないよ」
モビー・ディック号は再び大海原を突き進んでいた。
最近琴里は暇な時甲板に出てぼんやりしていることが多くなった。
この日も甲板で手すりにもたれてだらりと海を眺めていたら、マルコが横に来た。
琴里はちらりとマルコを見て、また視線を海に戻す。
平然と、漫然と、緩慢に。
「……………………」
「……………………」
マルコも琴里の隣に行き、同じように手すりにもたれた。
二人でいても、会話が続かない。
普段なら琴里が意気揚々と色々な事を話しだすのだが、今日は、最近はそれがない。
それどころか、一人でおとなしくしていることが多くなった。
誰かと談笑してる姿も、飛びついて困らせている姿も、笑っている姿をみなくなった。
「なんかあったか?」
「なんもないよ」
答えるときも、相手の顔を見ない。
「琴里、掃除当番だからもう行くね」
2010/09/30
「どうした」
「わかんない」
琴里はエドワードの上でだらけていた。
この船に来た時と比べれば随分と大きくなった琴里だが、それでもまだまだエドワードの方が大きい。
すっかり琴里の定位置の一つとなったエドワードの腹の上で、琴里は眠るでもなくただぼんやりと横になっていた。
エドワードが喋るたびに上下する腹の上は、温かくて安心する場所だった。
「わかんねェのか」
「うん。わかんない。琴里、どうしちゃったんだろう」
目を閉じて思考をめぐらせようとしたけれど、うまくいかない。
考えようとしても、何を考えていいのかわからない。
どうしたのかと自問自答しようにも、問題すら思いつかない。
頭がどろりと溶けてしまったみたいに、ぼんやりする。
「お前が元気ねェって、みんな言ってるぞ」
「そっか。心配かけちゃった」
「俺も、心配してる」
ごめんなさい、小さくつぶやいた。
元気がないというよりも、いつもの調子が出ない。
こんなこと初めてだ。
琴里自身も戸惑っている。
でも、どうやったら前みたいに振舞えるかわからない。
心配させているのはわかっている。
わかっているけど。
「わかんないよ、親父様」
琴里は泣いた。
静かに泣いた。
2010/09/26
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