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KLM

KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。

たまにしか更新しに来ないからね、忘れちゃってごめんね

前回更新したお話、既視感すごいなーと思ってたら、前にもブログに上げてたね、てへぺろりんこ。
今度こそ初出しの赤葦くんバレンタインだよ!!

デフォルト:桐崎啓(きりさきあきら)



さて、さてさてさて、恋する乙女の一大イベント。それはバレンタインデー。しかも今年は平日月曜日。これはもう、土日ですごいチョコを作って学校に持って行けという神様のお達し以外のなにものでもない。
とはいえ、わたしはこれまでバレンタインというイベントを無視し続けてきた。木兎くんへの義理チョコはおろか、女子同士での友チョコでさえ、だ。だって、なんか面倒くさい。お小遣いだって限られているのに、どうしてチョコを渡さなくちゃならないの。貰った人にだけホワイトデーにチョコを返すけど、それだって本当はしたくない。欲しくもないチョコを押し付けられて、なぜお返しをしなければならないのか。理不尽だ。まったくもって理不尽だ。
そのような理由から、わたしは例年バレンタイン不参加を貫いてきた。
しかし、今年は赤葦くんという好きな人がいるので、ぜひとも参加表明したい。手始めにネットで簡単そうなチョコレシピを検索してみる。本当にチョコを溶かして材料を混ぜて固めるだけの簡単さだったので、もう少し女子力が欲しいと複雑そうなものを検索してみた。ブラウニーやらタルトやら、はてはマカロンまで様々なお菓子がヒットする。
そこでふと、赤葦くんは甘いものが好きかしら、と単純だけどとても重要な疑問が浮かび上がった。あまーいチョコ菓子を作って渡したものの、甘いものはちょっと、と受け取り拒否されては悲惨すぎる。赤葦くんの好みは如何に。
木兎くんに頼んでリサーチしてもらうのは簡単だ。けれどもきっと馬鹿正直に「桐崎があかーし甘いもの好きかどうか聞いて来いってー」と言うに決まっている。もし仮に気を利かせてわたしの存在を伏せてくれたとしても、相手は赤葦くんだ。なぜ木兎くんがそのような質問をするに至ったのか聞いてくるに違いない。
となれば手段は一つ。

「直接聞くしかないか」

バレンタインまであと2週間。
思ったよりも、事前準備が大変かもしれない。

*
「赤葦くん、ジュース間違えて買っちゃったんだけど、どっちか飲む?」
そう言って赤葦くんの目の前に差し出したのは、ココアとイチゴオレ。
お弁当を食べた後、大急ぎで食堂にある自販機まで行って買ってきた。
「二つとも桐崎先輩が飲んだらいいんじゃないですか」
「それもいいんだけど、ぬるくなったジュースってヤじゃない?」
「わかりました。桐崎先輩はどっちが好きなんですか」
ジェントル赤葦くんは、わたしに好きなジュースを選ばせてくれるらしい。まぁ、わたしのお金で買ったものだから当然か。しかし今回遠慮されては困る。なんたって、赤葦くんの好みを知るためにわざわざ甘ったるいジュースを2つも買ったのに。
「どっちも好きなんだよね。赤葦くん、欲しいの取っていいよ」
さぁ、どっちを選ぶ、赤葦くん。ココアなら普通に甘いものが食べれる、イチゴオレだと甘いものが好き。どちらも選ばないならそれはそれで結構。甘いものは苦手と判断します。え、これで大丈夫?判断基準あってるよね?
「えっと…」
「甘いの苦手?」
「苦手ってわけではありませんが」
「あんまり好きじゃないか。じゃあ無理に渡すのも申し訳ないね」
「あ、いえ、頂けるのであればください」
「そう?無理しなくていいよ」
そういって赤葦くんが手にしたのはココアだった。正直、甘いものをと買ってみたものの、赤葦くんがイチゴオレを飲むとはこれっぽっちも思ってなかった。ちょっと詰めが甘かったけれど、赤葦くんはあまり甘いものを好まない。これがわかっただけで、計画は大成功だ。
バレンタインに作るものは、甘さは控えめ。赤葦くんは甘いものがあまり得意ではない。うん、一つ赤葦くんを知れた。
*
「桐崎先輩は、バレンタイン誰かにあげるんですか?」
「あかーし、桐崎にねだっても無駄だぞ、桐崎チョコくれねーからな」
木兎くんのせいで、わたしのバレンタインは始まる前に終わりかけた。
「そん、そんなことはないよ!」
「えー、だって去年くれくれ言ったのにくれなかったじゃん」
「当日に言われても、何も持ってるわけないでしょ」
バレンタイン当日、気が向いたから作ってみたという言い訳を考えていたのに、すべておじゃんになった瞬間だった。
いや、まだいける。まだ気が向いたから作ってみたでいける、はず。
「じゃあ、今年は誰かにチョコあげるんですか?」
「うん、誰とは言わず、バレンタインだしチョコ作ってみようかなとは思ってるよ」
「まじで?じゃーくれよ。桐崎ふつーに料理うめーじゃん」
「なんで木兎さんが知ってるんですか」
「調理実習のカップケーキとか、ふつーにうまかったもん」
「フツーフツー連呼しないでくれるかな。まぁ、確かに普通だけど」
やばい。どんどん話が変な方向へ反れていく。
何とか軌道修正しつつ、当日チョコを持って行っても不思議ではない状況を作り出すのに苦労した。
*
“赤葦くんへ”
シンプルに宛名だけ書いたメッセージカード。好きです。なんて書いてもよかったけれど、それはまだ時期尚早な気がした。よかったら食べてね、とかさりげない一言を書こうかとも悩んだけれど、やっぱりやめといた。どうやらわたしは、変なところで臆病らしい。
それなりにラッピングしたブラウニーを幾つか持ち、息を吐く。
本当は赤葦くんにだけ渡せたらいいのだが、そうしたら本命だとバレバレだ。カモフラージュの為に、義理として配る分を用意した。木兎くんの分と、あとは適当。男子でも女子でも、欲しいと言ってきた人にあげたらいい。

問題は、どうやって赤葦くんに渡すか。
いつも通り昼休みに会えたら、その時でいい。でも、もし会えなかったら?いっそ下駄箱にいれてやろうかと考えたけど、衛生面的にやめておいた。木兎くんに頼むのも、渡し忘れられそうで却下。偶然廊下で出会えたらいいな、なんて都合のいい展開が起こるわけもなく、気づけばもう放課後。
もしかしたら、どこかに呼び出されて告白でもされているかもしれない。なんたって、あの木兎くんですら告白されたのだ。意気揚々と「桐崎、俺カノジョできた!」報告を受けた。おめでとーと祝っておいた。これで木兎くん用の義理チョコが余った。他にも、配布用として持ってきたものがいくつか余っている。例年通りバレンタイン不参加だとクラスメイトに思われているらしく、誰もわたしにチョコをねだりに来る人なんていないとは思わなかった。
「不毛だ…」
好きな人の為に、手作りというものをしてみた。
好きな人に好きってバレたくなくて、カモフラージュ用に幾つか準備した。そしたら、余った。そのうえ好きな人にも渡せていない。これじゃあ、一体何のために作ったのかわからなくなる。赤葦くんの好みをリサーチしたり、ブラウニーの材料を買いに行ったり、ラッピングしたり。そりゃもう手間を惜しまずバレンタインに尽力した。
その結果が、これ。
赤葦くんは、きっともう部活に行ってしまっただろう。わざわざ追いかけて渡すほどの熱意はない。やっぱり、下駄箱に入れて帰ろうか。いや、体育館と校舎は別の場所だから、もう下駄箱作戦も通用しない。赤葦くんが今後確実に寄るのは部室だけ。あーあ、やんなっちゃう。
なんて自分の見通しの甘さにため息をつきながら1年生の教室を後にしようとしたら、なんと対面から赤葦くんが歩いて来たではないか。

「うわ、なんでいるの」
「こっちのセリフですよ。なんで桐崎先輩が1年の教室にいるんですか」
「赤葦くんいないかなーって」
「少し呼び出されていたので、部活に行くのが遅くなったんです」
バレンタイン当日の呼び出しなんて、告白って相場が決まってる。どう返事したのか気になるけど、今はそんなことより赤葦くんに会えたことの方が嬉しい。迷子になりかけていたブラウニーの行き先が、ようやく決まった。

「赤葦くん、甘いものは「好きです」
即答された。
即答されて、とても困った。だって、赤葦くんが甘いもの好きだなんて聞いてない。赤葦くんのためにと焼いたブラウニーは、甘さ控えめのほろにが仕様に仕上がっている。リサーチが失敗していたとはまさかすぎた。

「どうしよ、これそんなに甘くな「ください」
またもや即答だった。何だったら、わたしのセリフに被せてくる勢いの即答だ。
甘いものが好きで、甘くないものも好きという珍しいタイプなのかもしれない。ならよかったと、紙袋を押し付ける。
「せっかく作ったのに、自分で食べることになるとか悲しすぎるじゃんね」
「なんか、たくさん入ってるんですけど」
「うん、適当に作ったら、余っちゃった」
「余りものなんですか、これ」
トーンダウンした声に、笑う。
余りものなわけがない。これは全部赤葦くんの為に作ったものだ。義理分も、赤葦くんのお裾分けのようなものだからあながち間違ってもいないだろう。

「ちょっと貸して。えーっと、ほら、これ」
“赤葦くんへ”
メッセージカードが添えられた一つを取り出す。
赤葦くんの為だけに作ったブラウニー。世間体の為に他の人へあげることになったけど、元をたどれば全部赤葦くんの為だけのもの。

「ほら、赤葦くん用にちゃんと用意してたんだから」
赤葦くんの為に作ったんだよ、と手渡せば、じっとメッセージカードから視線をそらさずに受け取ってくれた。
ミッションコンプリート、こうしてわたしのバレンタインは大成功のうちに幕を閉じたのであった。


シリーズものと同じ主人公設定のはずが、口調・性格ともに全然違ってしまったので、普通の短編ということに。
気持ち的に 赤葦くん→→←夢主くらいな感じ。策士策に溺れる。策を弄しすぎて両片思いなのに気づけない。あるいは外堀を埋めるのに必死すぎて、とっくの昔に埋まってるのに気づいてないだけ。

書き上がってると思ったら書き上がってなかったwww
ひとまず書き上げたので、置いときます。この後赤葦くん視点のその後があったのですが、そっちは全然書き上がらなそうなので、またの機会(数年後)にでも。

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