KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。
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琴里が最初に行ったのは、あいさつ回りだった。
1000人を優に超える白ひげ海賊団船員全員に、琴里は挨拶をして回った。
琴里は一人ずつ、ちゃんと、きちんと、ずいぶん略式ではあるが、とりあえず名前と笑顔を振りまいてまわった。
「あにき、琴里です、よろしくおねがいします!」
2010/09/17
「おやじー」
「んだよ」
「えへへ、おやじー」
「甘ったれ」
琴里は暇なときは始終エドワードにくっついている。
元々孤児として忍の里で育っただけに、はじめて出来た家族が嬉しくて仕方ない。
特にエドワードは大きいし、船長だし、立派だし、尊敬できるし、短期間だがものすごく信頼できる。
琴里はラグに座っているエドワードの首に抱きついてみたり、膝によじ登ってみたりで忙しい。
エドワードも小さい息子が可愛いらしく、好き勝手させては時々可笑しそうに笑っている。
「琴里もおやじみたいに大きくなれる?」
「いっぱい飯食ったらな」
「琴里、おやじすきっ!」
「グララララ、俺もだぜ、息子よ」
2010/09/17
琴里は誰にでも人懐っこい。
ただ、数名を除いては。
「おいクソガキ」
「べーっ」
琴里はマルコが好きではない。
第一印象が悪すぎた。
マルコは琴里を不審者と決めつけ、押さえつけ、泣かせた。
自分をいじめたマルコを、琴里はもはや敵として認識している。
持ち前の俊足を武器に、琴里はマルコに会うと必ずあっかんべーをして逃げていた。
子供のやることにいちいち腹を立てていては大人げないと思っていたのだが、いい加減堪忍袋の緒が切れた。
マルコと琴里の鬼ごっこの始まりである。
「くぉら、待て、クソガキっ!!」
「ばーかばーか!!」
琴里はぐんとスピードをあげると、そのままマストに飛びついて器用に昇って行った。
呆気にとられたのは、二人の鬼ごっこを見ていた他の船員である。
つい先日白ひげ海賊団に入団したばかりとはいえ、所詮は子供。
雑用か見習いか、その程度のことしかできないと思っていたのに、曲芸か何かすいすいとマストをよじ登って…いや、駆け上がっている。
後ろを振り向いてみれば、追いかけているのは1番隊隊長のマルコであるし。
隊長を手玉に取るとは、末恐ろしい子供だというのがその場にいた船員の会見である。
「降りてこい、クソガキ!」
「いーよ」
のぼったと思えば、今度は勢いよく飛び降りた。
一瞬小さな悲鳴が起こったが、琴里は器用にくるくる回って、見事に着地した。
マルコの顔の上に。
もちろん琴里だって馬鹿ではないし、一応は前線で忍として活躍していた身である。
手心を加え、ちょっと鼻の骨が折れて鼻血が出る程度に勢いは弱めていた。
にっくきマルコを踏み台にして、また颯爽と逃げ出すつもりだった。
「よーやく、捕まえたよい」
「は、はなせっ!」
琴里は完全にマルコをなめきっていた。
彼は腐っても1番隊隊長なのだ。
数字がその強さを決めるわけではないけれど、隊長という肩書は伊達ではない。
真っ逆様に落ちてくる子供の攻撃を防ぐなど造作もないことだった。
「みっちり仕置きしてやるよい。ついでに、立場と目上に対する礼儀っつーもんを教えてやるよい」
「ぎにゃー!」
2010/09/17
琴里はなぜかサッチに懐いている。
いわく、似ているらしい。
「ねえサッチ、なんでみんなきものちゃんときないの?」
「着てたら邪魔だろーが」
「ふぅん?琴里じゃまじゃないよ」
「コトリはガキだからなぁ!」
「琴里はねぇ、大きくなって一人前の忍になっておやじの役にたつんだー」
「はっはっは、そりゃいい!」
「そいでね、おやじとけっこんするの!」
「…………いやいやいや、そりゃ無理だろ」
「なんでー?琴里、おやじすきだよ?」
「よし、俺が女の良さを教えてやる」
「ナースのおねーちゃんやさしーよ?」
「お前がいっちょまえに成長したら、俺が面倒みてやる!」
「わーい!」
似ているのは、リーゼントが伊達軍を彷彿させるとか。
2010/09/17
「おやじー!」
相変わらず元気よく駆けてくるのは、珍しく上半身裸の琴里だった。
普段は自分の服を着ているのだが、今日は特別暑かったらしくみなの真似をして脱いでみたのだという。
日に焼けていないなまっちろく、子供らしくなめらかな肌が惜しげもなくさらされていた。
問題ないと言えば問題ないだろうが、中には特異な趣味の奴もいるだろう。
これは教育せねばならないか、とエドワードは思った。
「あつい!」
「だが服は着とけ、服は」
「みんなぬいでる?」
「このやわらけぇ腹があいつらみてぇに割れたら脱いでもいいぜ」
琴里は自分の腹を触ってから、エドワードの腹を触ってみた。
かっちかちだった。
「おやじ、すごいっ!」
「男ならこれが普通だ」
「そっかぁ。琴里も、がんばればおやじみたくなれるかなぁ?」
少ししょんぼりしたかのように眉を下げた琴里は、どこか思案顔だ。
珍しいこともあるものだな、とエドワードはいつも空元気の琴里の頭をなでる。
「心配すんな、こんなの自然とついてくらぁ」
「そう?だったらいいなぁ…」
「なんだ、えらく弱気じゃねぇか」
「琴里おんなだけど、ちゃんときんにくつくかなぁ?」
エドワードが固まり、上半身素っ裸の琴里を改めてみる。
胸よりは腹が出ている。
これくらいの子供は男か女か身体つきでは判断できないと聞いていたが、 ま さ か !
認識してしまうと上半身裸の琴里を正視できなくなって、大急ぎで自分の上着を脱いで琴里をくるんだ。
エドワード・ニューゲート、数年ぶり、下手したら数十年ぶりに驚いた瞬間だった。
2010/09/17
「コトリー風呂入るぞー」
「あいっ!」
「うちの風呂はでっけぇから気持ちいいぞー」
モビー・ディック号には浴槽が備え付けられている。
しかし船員数がとても多いので、入浴は毎日というわけにもいかない。
もちろん新人である琴里にも当てはまるので、この日は琴里初めての入浴だった。
「クソガキ、あんましはしゃぐなよい」
「うーい」
先日のお説教騒動からすっかり琴里の世話役となってしまったマルコは、こちらの話半分に服を脱ぎ散らかしている琴里にため息をついた。
間をおかず、浴室からきゃーきゃーばしゃばしゃ騒ぐ声が聞こえる。
お風呂、前編。
2010/09/17
「おー!いーにおいする!ふわふわ!おいしい!?」
「食ってみるか?」
「…にがい」
「ぎにゃー!目に入った、いたいいたいいたい!!!!」
「こっち向け、水掛けてやる」
「ふはっ!」
「で、これなに?」
「泡だ、石鹸の」
「ふぅん?おもしろいね!」
「琴里、湯あみってはじめて!たのしいね!あったかいね!!!」
中編
2010/09/17
「おーいクソガキ、てめぇもちっとおとなしくしろい」
「マルコっ!おふろってすごいね!?すごいね!!!」
遅れて入ってきたマルコは興奮した様子で駆けてきた子供を小脇に抱え上げ、身体を洗ってやろうと風呂イスに座らせた。
石鹸を泡立てて頭を洗ってやる。
なんでこんなことしねぇといけねぇんだ、と思いながら何度目かのため息をついた。
妙に子守りが板についてきた自分にもため息だ。
「ふひっ、くすぐっちゃい」
「我慢しろい」
「あう、いたい」
「ほれ、身体は自分で洗え。要領はわかったな?」
「あい」
楽しそうに身体を洗う琴里の横でマルコも自分の体を洗い始める。
「マルコ、あらいおわった!」
「ん、流してやるから待っとけ」
「あい!」
2010/09/17
おったまげた。
ついてなかった!
「おいクソガキ」
「なに?」
「お前、女か?」
「琴里おんなだよ!」
身体を洗い終わったというのでその身体を流してやる。
泡が綺麗に落ちた身体を見て、違和感を感じた。
あるべきものが、ついてない!
「クソガキ」
「琴里!」
「コトリ…先あがってろい」
「えー、琴里まだ湯あみした…」
「いいから先あがってろ!」
「ふ、わ!ぁい…」
予想外に大きな声になったせいで琴里は半泣きになっていたが、今はそんなことにかまっている場合じゃない。
先に入っていた連中をじろりと睨みつければ、バツが悪そうに目線を背けるものばかり。
そういえば、途中から嫌に静かだったような気がする。
「テメェら、今見たことはすぐ忘れろよい」
保護者マルコ誕生。風呂編おわり。
2010/09/17
さて、好きキャラ贔屓がいかんなく発揮されてまいりました。
明日か明後日にはマルコルートかっこわらいかっことじるに入ります。
…エースに出番はあるのかな!
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