KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。
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ナフタリンの本を読んでたらこういう話を書きたくなった。
わたしが死んだら、ナフタリンで標本にしてね
彼女はそう僕に言い残して、自殺した。
方法は服薬、第一発見者は僕。
彼女は遺書を残しており、僕はそれをそのままにして彼女の遺体だけを持ち帰った。
彼女の望み通り、彼女をナフタリンに漬けて標本にした。
完全に浸透するまで数日かかった。
その間に彼女のアパートの管理人が遺書を発見し、彼女は失踪したことになった。
遺書の内容は
“ 樹海へ行きます、さようなら ”
僕は僕で、ガラスの棺を注文していた。
できるだけ透明で、強度があって、密閉性が高い物をオーダーした。
出来上がるまで数カ月かかるらしい。
それでは困るので、オーダーに応えてくれてできるだけ早く作ってくれるところを探して注文した。
お金は少しかかったが、使うあてもないので言われるがまま払った。
他には地下室のある自宅を郊外に購入した。
業者には、地下室は使わないので数日後ふさぐように頼んだ。
生憎と僕は立ち会えないが、事前の打ち合わせ通りよろしくお願いします、とも頼んでおいた。
「二人きりですね」
コンクリートうちっぱなしの地下室は、とても閉鎖的で圧迫感がある。
光源が裸電球一つだけなので、四隅は薄暗い。
だが、部屋の真ん中の彼女はよく見える。
真っ白になった彼女。
髪の毛も、まつ毛も、肌も、その時着ていたキャミソールと短パンも。
全部が白い。
ガラスの棺に眠る彼女は、永遠になった。
ナフタリンで標本になったことで、腐ることがなくなった。
年月の経過で彼女は少しずつ昇華し、消えていく。
だが、本当に消えてしまうわけではない。
彼女の体が少しずつ消えていく代わりに、棺の中にいくつもの結晶ができる。
ナフタリンは液体を介さず、固体から気体へ一気に昇華する特性を持つ。
固体から気体になったナフタリンは再度結晶化し、また気体になる。
繰り返し生まれては生まれ変わる、つまりは永遠。
彼女の結晶。
彼女は何度も消えて、なんども現れる。
決して消えない、永遠になった彼女。
わたしが死んだら、ナフタリンで標本にしてね
永遠に貴方と一緒にいられるように
笑う彼女はもう僕の記憶の中にしかいないけれど、彼女は永遠に僕のそばにいる。
すばやく棺を開け、その中にもぐりこんでまた閉めた。
そして大きく深呼吸する。
彼女の一部が、体に入ってきたらいいのに。
そう思いながら、白い彼女に口づけてその唇をなめた。
棺の中の空気がなくなるまでどれくらいだろうか。
僕は彼女に寄り添い、目を閉じた。
2013/05/06
昇華しては結晶化する、を繰り返すのはすごいなぁと思ったのがこの作品。
ナフタリンオブジェの制作方法は調べたけどよくわからなかったから適当。
ちなみに主人公は普通に死んで汚くなります。
運よく結晶がくっついたら同じように昇華と結晶化を繰り返して、二人して永遠になれる。
でも、そうならない現実。
どっかに永遠落ちてねーかなー!
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