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KLM

KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。

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えっとー、がっこ今日はお休みだった。
他特に書くことなし。



以下、BASARA連載。
今日は一気に6話ほど。
主人公情緒不安定になる、の巻。

あと、非常に忘れがちな設定ですが、主人公はこちらでは「若紫/わかむらさき」と偽名を名乗ってます。
「桐埼啓/きりさきあきら」という名前が現代風なのと、この世界では苗字は名乗らないものだと思ってるからです。
ついでに、若紫と呼ばれてる間は仮面をかぶってるような感覚だから、楽らしい。
今現在、主人公の本名を知っているのはこたろーちゃんのみ。
…あれ、これ、伊達夢のはずなのに…?

 

 

 


戦が近いらしい。
ぶっちゃけずとも、嫌だ。鬱だ。くそぅ。
戦争なんか、しなくていいじゃん。
それより、人が死ぬのがやだよ。
だって、このお城の人にはほとんど会ったことないけど、その人たちが死んじゃうかも知んないんでしょ?
嫌だ。いや、死なないで。

 

「………啓……………………」

「…………………なに」

「…………………なにか、…憂うことでも………」

「…ん、ごめん。なんでもないの」

 

普段無口な小太郎が聞いてくるくらいだから、きっとよっぽど思いつめた顔してたのかな。
私が悩んだって仕方ないことだってわかってるんだけどね。
戦争がなくなるわけじゃないけど、やっぱり鬱だ。
だって、もし片倉さんや伊達が怪我したらとか思うと、やってけない。
あぁ、成実も心配してやらないと拗ねるか。
…まぁ、とにかく、戦争が嫌だ。
どんなに善戦しても、誰も死なないなんてありえないもん。
嫌だ、お願い、死なないで。

 

「……………………啓…俺が、なんとかできる問題か」

「……違う、ごめん。なんでもないの」

「…………なんでもないようには、見えない」

「こたぁ」

 

私は遂に、我慢できずに泣きだした。
しかも、小太郎にしがみついて。
あぁ、うろたえてる。ごめんね、でも、許してね。

 

「戦がある、人が、死んでしまう」

「…………………」

「嫌だ、誰にも死んでほしくない」

「…………………」

「わかってるのに。そんなこと有り得ないって。だって、ここは戦国時代で、群雄割拠で、天下統一で、」

「………啓……………俺が、」

「ダメ、ダメ。こたも死んでしまう」

「…俺は、死なぬ。啓が生きる限り…俺も、生きる」

 

小太郎、小太郎。
それでも、人は死んでしまうの。
どれだけ生きようと思ってても、何かの拍子に死んでしまうの。
おかしいね、私はいつでも死にたいと思ってる。
けど、人が死ぬのは嫌なの。

あれ、私、つい此間まで他の誰がどうなってもいいやなんて、思ってなかった?

 

「矛盾してる。やだ、なんで?私、私が死んでも他の誰が死んでもいいと思ってるのに」

「……………啓は、優しいから…」

「違う、私は…!」

 

いつの間にか、大切な人が、できてたの?
そう、そうなの?
だから、大切な人に死んでほしくないと思ってる。
わかったけど、だったら尚更…。

 

「いかないで…」

 

 

 


小太郎は、ただ、そこに居てくれた。
2009/04/14

 

 

 

 


「どうした、珍しく早起きじゃねぇか」

 

伊達の軽口に、困ったように笑って見せることしかできない。
いつもの軽口が、出てこない。
どうしよう、ヤバい。
頑張れ頑張れ、若紫を、いつもの若紫を演じろ。

 

「たまには、朝に目覚めてみるのもよいかと思いまして」
 (嘘。最近眠りが浅くて障子越しの光で目が覚める)

「Have a good idea だがな、それで体調を崩してたら意味がねぇんじゃねぇか?」

「あら、公の方こそお気をつけなさいませ。この所忙しなく働いているご様子。お疲れなのではございませんか?」
 (行っちゃうくせに。死にに行くくせに)

 

「もうすぐ戦があるからな。…出来るだけ、傷つけねぇ様にする」

 

伊達が、私を抱きしめる。
伊達が傷つくことで、私が傷つくのは構わない。
それで伊達が少しでも楽になるのなら。
そもそも、私は全てを受け入れているのだから、伊達はなにも気にする必要はない。

 

「……お願い申しあげてよろしいでしょうか」

「It's rare なんだ」

 

いかないで。
なんて言葉は言えない。
だって、それじゃあ何の為に伊達が頑張ってるのか分からなくなる。
伊達は、天下を治めるために今生きてるんだ。
その生きる意味を取ったらいけない。

 

「死なないで」

 

伊達の胸から顔をあげて、その片方しかない目と、もう片方の目があった場所を見て言った。
もう余計なことが考えられなくて、言葉使いが戻ってしまったけど。
それでも、この言葉だけは伝えたかった。

 

「お願い、死なないで。誰も死なないで。みんな連れ帰ってきて」

 

伊達が死ぬことはないのはわかってる。
だって、伊達の怪我を引き受けるのは私の役目だから。
私がそうやって死ぬことで、伊達が生き残るならかまわない。
でも、他の人の傷まで引き受けることはできない。
いっそ、自分が死ぬことでみんなが助かればいいのに、と思う。
そうはいかないと思っていても、そう願わずにはいられない。

伊達はもう一度強く私を抱きなおして、約束した。

 

「俺は死なねぇ。 I promiss」

 

けど、約束は必ずじゃないことを知ってる?

 

 

 

 

伊達に縋る私は、いつの間にか若紫じゃなくて桐埼啓に戻っていた。
2009/04/14

 

 

 

 

 


歌う事がめっきり少なくなって、日永一日ボーってしてることが増えた。
伊達は、戦の準備やらでこの部屋に来る回数が減った。
成実はなんだかんだで結構な回数来るが、それでも顔をのぞかせるだけだ。
そして、滅多にこの部屋に来ない片倉さんが今日は来ていた。

 

「若紫、戦がある」

「存じております」

「政宗様はお強いが、それでも無傷というわけにもいくまい」

「ご心配には及びません。わたくしは、いつも通り過ごすまで」

「……頼む」

「はい、承りまして」

 

改めて頼まなくても、私は、嫌がったりしない。
そもそも、自分の意志で伊達の傷を引き受けているわけじゃないからどうにもならないし。

 

「片倉様。どうか、片倉様もご無事で」

「無論だ」

 

…片倉さんは偉い人だから、運が良ければ直接戦地へ行かないで済む、かもしれないと思う。
私は、戦争がどんなものか知らないから、全部憶測で考えるしかない。
出来るだけ、危ないことはしないでほしい。
そしてやっぱり、できることなら行かないでほしい。
けど、何日も考えて仕方のないことだとやっと納得できるようになってきた。
それでも、やはりこのような挨拶は今生の別れのようで切なくなる。
ぎゅう、と眉間に力を入れる。
きっとあまり上手に笑えていないだろうけど。

 

「ご武運を」

 

 

 


2009/04/15

 

 

 

 

 


「……………啓が望むのなら、…俺は行こう……………」

 

小太郎が、静かにそう言った。
小太郎は、絶対に死なないといっている。
小太郎に、私は何をさせたいの。

 

「私が…何を、望むというの」

「…俺が、敵将を消そう。……そうすれば、」

 

小太郎が、敵将…敵の、一番偉い人を、消す…。
それって、殺すってこと?
あ、

 

「そんなの、だめ!」

「……………………………………」

「こたが、危ないじゃない!」

「……………………………………」

「そんな危ないこと、やめて…」

 

伊達や片倉さんが傷つくのは嫌。
でも、小太郎も傷ついちゃダメ。
死んじゃ、だめ、絶対に!!

 

「…………啓、大丈夫だ、俺は、死なない」

「嘘。人は簡単に死ぬもん」

「………俺が、敵将を消せば、他の奴は傷つかない」

「でも、こたが、危ない…」

 

「啓が望むのなら、俺は死なない」

 

 

 

さぁ、言え、啓。 我に望め。 我はお前のために存在している。
2009/04/15

 

 

 

 

 


「若紫」

 

若紫の様子が変だ。
戦が近いと、嘆いていたのは知ってる。
先だっても、彼女は伊達の胸で泣いたのだ。
気丈で己の感情を滅多に表に出さない彼女が。
死ぬな、と泣いたのだ。
ほかならぬ、自分のために。

彼女の素の部分を垣間見れたような気がして、妙に嬉しかった。
自分を心配して泣いているのだと思うと、彼女への思いで胸がいっぱいになる。
抱きしめた肩は薄く尖っていて、手をまわした腰は信じられないくらい細かった。

その時でさえ心配だったのに、最近一層ひどくなった。
以前のように足繁く通えなくなったが、それでも忙しい公務の合間を縫って部屋を訪ねるも、上の空だ。
声をかけても、はい、とか細い返事が返ってくるだけ。

 

「若紫、どうした」

「…………なにも」

「戦が嫌なのか」

「…………いいえ」

「俺は、死なねぇ」

「…………はい」

 

ずっと外を見て、手を引いて抱きしめてもだらりと弛緩した体は動かない。
そしてただ一言。

 

「こた…ろー」

 

ぽつりとつぶやいた。

 

 

 

 

伊達編はいつも短い。
2009/04/15

 

 

 

 

 

“ お願い、助けて… ”

 

縋ってしまった。
小太郎に、そう言ってしまった。
小太郎は私の頭をそっと撫でて、静かな声で 承知した と言って消えた。

小太郎が行って、もう十日が経つ。

心配で胸が潰れそうだ。
もう何度、言わなければよかった、と思ったかわからない。
心配で心配で、どうしようもない。
謝罪してもしきれない。

 

「ごめん、ごめんね、こた…!」

 

泣かない夜はない。
いつ帰るか分からない小太郎を待つために、夜眠ることもしなくなった。
どうせ、城にいるだけの存在だ。
泣いてても、眠らなくても、何ら差支えはない。
それよりも、小太郎一人辛い目にあわせて私だけ眠っていることのほうが問題だ。
ごめんね、ちゃんと、待ってるからね。

 

「どうか、無事で帰ってきて…」

 

呟きは、声になったかどうかわからない。

 

 

 


2009/04/15

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