KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。
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こっそり気配を絶つのは琴里の最も得意とすることだった。
元忍者、忍ぶ者。
隠密行動は得意中の得意だ。
もう随分昔に忍から海賊に転職したが、幼い頃に叩き込まれた基礎は消えない、消さない。
この船で役に立つために、琴里は忍の修行を怠らなかった。
琴里は非戦闘員だが、隠密起動、暗殺者として白ひげで活動していた。
閑話休題。
出来るだけ足音を立てずに、気配を消し、抜き足差し足忍び足。
琴里が本気を出せば、誰かの部屋に忍び込むなんて造作ないことだった。
ちらりと時計を見て、時刻を確認。
目指すはベット。
目的は…。
「たんじょーび、おっめでとぅ!」
ばふっとベットに寝てるマルコに飛び込んだ。
みんな寝ている時間だから、声は小さめに。
突然のことにマルコはびくりと思い切り体を震わせ、条件反射で相手を捩じ伏せようとした。
ここら辺琴里も心得たもので、どうすればマルコが琴里だと認識してくれるか、攻撃をかわせるかは把握済みだった。
ぎゅっと抱きついて、もう一度おめでとうという。
それだけだ。
それだけでマルコは琴里を琴里と認識してくれる。
マルコの手が琴里の首に届く前に、琴里はマルコに言葉を送る。
寸でのところでマルコの手が止まり、身体の力が抜けた。
「驚かせるな、バカ」
マルコは侵入者の首を掴もうと伸ばした手を琴里の肩に回し、そのまま抱きしめた。
まだ少しだけ心臓が煩い。
琴里はそのままぎゅうぎゅうと抱きつく。
薄い布団が琴里とマルコを邪魔したが、二人は気にしない。
「誕生日、おめでとう!」
「お前今何時かわかってんのかよい」
「零時だよ、マルコの誕生日!おめでとうありがとう!!」
琴里はそのままマルコの瞼にちゅと口づける。
幼いころサッチに "マルコの誕生日だから、ちゅっと一発やってやれ" と言われて以降ずっとマルコの誕生日にはキスを送っている。
今から考えればマルコの気持ちを知っているサッチが面白半分で琴里に教えたことだろうが、それがどうしてだかずっと続いている。
マルコがそれをやめろと言ったことはない。
年に一度、誕生日くらいは、マルコは自分を甘やかしたかった。
愛しているが手の届かない琴里。
そんな琴里がたった一日、一度だけ示してくれる愛情。
子が親に向ける愛情表現でしかないということはわかっている。
だけどマルコはそれでもよかった。
矮小だと取られてもかまわない、偽りでも、自己満足でも、琴里から送られるキスが最高のプレゼントだった。
そんなマルコの気も知らず、琴里はそのままマルコの布団にもぐりこむ。
いつもと違うのは、琴里がマルコを抱きしめたことだった。
マルコの頭を胸に抱き、やわらかく包み込む。
「マルコ、おやすみ。誕生日おめでとう、いつもありがとう」
琴里の背に、マルコの手が回る。
「マルコ、だいすき」
眠れない夜
2010/10/06
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