KLM

普通に頑張ってます。
以下、魔リオちゃん、前回の続き。

時刻は17時過ぎ、帰ってきてあげたわよマイホーム！
ち、ちゃんと片付けてきたんだから！背中に鳥肌立てながら！！
家族構成は父母妹の四人家族、家は住宅地の庭付き二階建て土地付き持家。
赤い屋根の大きなおうち、とまではいかないけど、まぁ普通の家よ。
車庫の脇に並べられた鉢植えには季節の花。お母さんの趣味かと思いきや、お父さんの趣味よ、これ。
それらの横を歩いて、いざ帰宅。
どうして自宅って玄関開けただけで落ち着くにおいがするのかしらね？

 

「ただいまー」

「あ、まり江おねーちゃんだ。おかえり」

「おー、まり江帰ってきたのか。おかえり」

「まり江ー！手ぇ洗ってこっち手伝いなさい！」

 

いいわよ、諸君。
最初から疑問に思ってたことを答えてあげるわ！！
魔リオはね、ウィザードとしての名前よ。
魔なんて人名用漢字として採用されてないし、一般的な感覚を持つうちの父母がこんな奇天烈な名前つけるわけないわ。
本名は黒田まり江。ま、普通の名前ね。普通の名前過ぎて腹が立つったら！
で、魔リオって名前もね、ちゃんと考えてんのよ。
魔って文字を名前につけることで、魔力の底上げしてんの。他にもこの業界って真名知られるとまずいことって色々あるし。
そんなわけでの魔リオちゃんことまり江よ！

スリッパを使わないで靴下のまま廊下を歩いて、リビングへ。
扉をあけると不思議の世界でも何でもなく、ぐつぐつと湯気の立つ鍋をあたしを除く家族四人がテーブルにそろって座っているわ！
あぁ家っていいわね！偶に思うだけだけど。

 

「まり江、後で全部メンテナンスしといて。野菜食べなさい」

「はいはい、もうそんな時期か。嫌よ、お肉すぐなくなるじゃない」

「まり江ちゃん、わたし欲しい服いっぱいあるの！まり江ちゃんだけ肉食べすぎ、遠慮しなよ」

「はいはい、いらない服と欲しい服の写真出しときなさい。いいでしょ、あんたは野菜でも食べときなさい」

「まり江、お父さんは九州へ行きたいな。こらこら二人とも、仲良く野菜を食べなさい」

「いいよー、いつ行く？お父さん卵二個目！ずるい！」

 

お母さん専業主婦、妹高校生、お父さん物理学者、あたしウィザード。
そんなありふれたぬくもり溢れる家庭よ！
みんなでテーブルの真ん中にあるすき焼きつっつきながら、一家団欒。
テレビはバラエティ、テーブルのど真ん中に電気コンロといい感じに煮え立ったすき焼きなべ、各々の前には卵の入った器とご飯と麦茶入りのコップ、あと漬物。
鍋奉行はいない、肉食多数、しめはうどん、薄切りもちは途中、シラタキよりマロニーちゃん。
おいしいわぁ…やっぱり肉は牛肉よ！あと醤油と砂糖の組み合わせ最高。卵もナイス。
ただしネギは危険よ、美味しいけど、あいつ冷めたと思って食べると中からヤバいのが出てくるわ…。今日二回やけどしたもの！！

 

「しかしまり江が魔法使いで助かったわ」

「便利だよねー」

「謎を解明したいなぁ」

「だったらお小遣いもうちょっとちょうだいよ」

「「それとこれとは別」」

 

上から、豆腐をふうふうお母さん。
卵がなくなって二個目を割ろうか迷い中の妹。
ネギをにこにこしながら食べるお父さん。
肉をがっつきたいけどお母さんの目が恐いからにんじんもぐもぐあたし。
最後肉にうつった父母。
何よ、ケチ！
この家はあたしのおかげで便利に賢く節約できてるって言うのに、ひどい話だわ！

まずお母さんのメンテナンス。
庭の時間設定をちょっといじって、庭に四季を全部そろえてんの。
右上は春、左上は夏、右下は秋、左下は冬エリア、ってな具合にね。
それぞれ季節の家庭菜園で、いつだって旬の野菜や果物が食べれるようになってるわ。
うちの庭せまいから、本当に家庭菜園レベルだけど。
それでも家族五人一食分くらいの野菜の量にはなるのよ。大したもんでしょ。
世話してるのはお父さんだけど。
あとは高熱水費。
水ならコップ一杯でお風呂一回分の水が出たり、電気は一度つけたら消すまで一回分の電気量で済んだりしてるのよ。
オール電化だからガス代はいらなくて、高熱水費格安よ。
うまいこと伝えられなくてもやっとするけど、通常の1/10の量くらいで済んでるってことかしらね。
ちなみに太陽光発電もしてるから、余った電気は電気会社に売って儲けてるのよ、すごくない？

妹の服。
雑誌から切り取った写真といらない服(布)を合わせて、写真の洋服を作るの。
正確には再構築ね。
いらなくなった服を再利用できるから、お財布にも自然にも優しいエコよ！
同じ原理で色々なもの作れるのよ、材料さえあれば。
アクセサリーやカバンとかも作れるわよ、材料次第では銀メッキとかハリボテになるけど。

お父さんの旅行。
これは単なる移動魔法ね！
交通費と時間を浮かせられるの。
ただ、出るとこちゃんと指定しないと何もないところから人間が現れることになって大変なのよ…。
だからネットで道の駅とか調べて、範囲指定で誰もいないところに送るの。
ほんとは海外行きたいんだけど、あっちはあっちでパスポートとか色々必要じゃない？
便利だけど不便よねぇ、法律ってなんだかすごいわ。ちゃんとしてる。

これだけ家の為に尽くしてるって言うのに、浮いたお金で仕送り増やしてくれてもいいじゃない！！
ウィザードとしてこれ以上ない働きでしょ！
というか、ウィザードを家電感覚で見られているような気がするけど気にしないわ！！

 

「あんたの為にいい牛肉使ってんだけど？」

「美味しいわよ！もっと！！」

「だから野菜食べてからならいくらでも食べていいつってるでしょ！！」

「うどんまだー？」

「あ、待っておもちもう一枚…」

「デザートはわらび餅だ」

「京都のが美味しいから好き」

 

お肉最高！
一人暮らしも素敵だけど、まぁ、月一回くらいなら家に帰ってもいいわね。

 

「ていうか、一人暮らしする必要ないのにオートロックかかるマンション借りてあげて仕送りもしてあげてんのにその言い草は何なのかしらね」

「…し、しっかり働いてあげるわよ…！お小遣いくらい自分のバイトでなんとかするわよ！」

「　"働いてあげる"？　」

「………仕送り分は働かせていただきます」

「お肉食べていいわよ」

「ぐぬぬ…」

 

 

 

2012/05/29
魔リオちゃん、本名黒田まり江、一般家庭の女の子でした。
魔法使いが日常生活に役立つのってどんな時？って思いながらの今回でした。
あとはテレビのリモコンどっかいったときとかも便利。何か小物なくしたときとか。
掃除は大掃除レベルで家の全埃すっとばすのだって一瞬でラクラク。
…魔法使いっていいなぁ。