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KLM

KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。

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本日二度目のブログです。

やっぱりキーボードだと打つ速さが段違いですね!
見直しも楽だから、携帯よりまだマシなレベルだと思います。
あぁ打ちやすい、パソコン素晴らしい!!

そんなこんなでマギ魔女です。
魔女と紅玉ちゃんで、ちょっとシリアス。






「あら、貴女…」

「わたくし宰相を務めております、アキラと申します。皇女殿下がこのような時間にいかがなさいました?」

 

アキラの政務が終わり、紫獅塔にある自室に戻ろうと回廊を歩いているとき、柱の陰に人影が見えた。
それは現在シンドリアに滞在している煌帝国の姫練紅玉で、なぜだか紫獅塔の柱の陰に隠れながらきょろきょろあたりを見回している。
供も連れず、一人でこそこそしている姿はとても怪しい。
時刻は夕日が沈んだ後で、いくら明かりが灯してあるとはいえ周囲は暗くなっている。
一国の姫といえど、決して良好な関係とはいえない国の、金属器を持つ姫である。
シンドリア滞在中は問題を起こすわけでもなく、滞在中ということもあり王シンドバッドとも友好な関係を築いていた。

紫獅塔は王や王の側近の私室や寝所のある宮で、入れる者は限られている。
入口も厳重に警備されているので、部外者が立ち入ることはできない。
アキラはシンドリアの宰相ということもあり紫獅塔に自室を持っているが、そんな国の真髄に他国の姫がどのような用だろうか。
敵意はないだろうが、用心するに越したことはなく、アキラは袂にしまってある杖に手を伸ばしながら声をかけた。

 

「し、シンドバッド様はこちらにおいでなのよね?」

「はい、こちらは王の私室のある宮になります。王に何か?」

「もうシンドバッド様はお休みになられているかしら…」

「皇女殿下がお呼びとあらば、飛び起きることでしょう。お待ちください、呼んで参ります」

 

目的は定かではないが、紅玉の様子にアキラは杖から手を離した。
シンドバッドの名前を呼ぶだけで頬を染め、姿を思い描いたのか視線を下に向ける姿は誰が見たって恋する乙女だ。
アキラも同じ女だからわかるし、事前情報としてジャーファルから”煌帝国の紅玉姫は王に懸想しているかもしれない”と聞いていたのもある。
可愛らしい紅玉に、アキラは笑みを禁じ得ない。
見し知らぬ城で一人、暗い回廊を歩いてきた紅玉のいじらしさを称え、シンドバッドを呼びに行こうとしたときだった。

 

「い、いいの!」

「え?」

「もうお休みになられてるんでしょう?だったらいいの…」

「せっかくいらっしゃったのに、本当によろしいんですか?」

「えぇ。日々お忙しいようだし、ご休憩を邪魔したくないわ」

「でしたら、何か言付けでもお伺いいたしましょうか?王にきちんとお伝えさせていただきますが」

 

アキラの服の袖をつかんで、紅玉はアキラを止めた。
しかもまぁ、なんて可愛いことを言うんだろうか。
恋する乙女は本当に必死で可愛いな、とアキラは思う。
でもね、その代わりに…、と紅玉は片手にずっと持っていたものをアキラに差し出す。

 

「シロツメクサの、冠?」

「子供のお遊びだけど、もしよろしければ差し上げようと思って…。でも、いらないわよね、こんな草」

「皇女殿下が手ずから気持ちを込めて作られたものでしょう?王は必ず喜んでお受け取りくださいます」

「ほんとう?」

「えぇ」

 

アキラが言ってやると、紅玉はそれまで以上に顔を赤くさせ、瞳を潤ませた。
おずおずとアキラにシロツメクサの冠を手渡すと、次第に笑顔になっていく。
繊細な作りのそれを丁寧に受け取ると、アキラは必ずお渡しいたします、と微笑む。
目前だった紫獅塔の扉をくぐろうとした瞬間、再度紅玉がアキラの袂をつかんで引きとめた。
振り返ったアキラの目に映るのは、必死な様子の紅玉だった。

 

「し、シンドバッド様はどのような女性がお好きなのかしら!?」

 

一瞬だけ動きを止めたアキラは、にこりと笑顔で答える。
可愛らしい少女、恋する乙女、煌帝国の姫。
好きな人のことなら何でも知りたい、可愛い可愛い一人の女の子。
彼女の望む答えを上げようじゃないか。

シンドリアの妃の存在はあまり公ではない。
もちろん王宮に近しいものや民の一部は知っている。知っているが、それはシンドリア王国内に限った話だ。
風の噂として他国に伝わることもあるが、噂の域を出ない。
噂が真実かどうか尋ねてくる国もあるが、そこは濁した回答をしている。
一代で国を築いたシンドバッドに娘を嫁がせ、自国の繁栄を願う国も多い。
シンドバッドは妻を娶らないと公言しているが、そういった話は後を絶たない。

つまり、他国にはアキラの存在が伏せられているということだ。
必要とあらばシンドリアの妃として、国王シンドバッドの妻として公の場に出ることはある。
だがそれは同盟国や、信用のおける国の場合のみだ。
ほとんどの場合、シンドバッド王の妻であるアキラのことは語られない。
本来なら隠蔽する理由はないのだが、シンドバッドはアキラの存在を公にしたがらないのが理由だ。
幸いにもアキラは王の妻であると同時に宰相という肩書きもあるので、王宮で隠れる必要も他国への訪問を禁じられることはない。

シンドリア王国宰相。
アキラの地位は、妻ではなく宰相なのだ。
もちろんシンドリア王宮内では国王シンドバッドの妻である。
妻であるのだが、一歩外に出れば妻ではない。
国のために政務をこなす宰相となる。


「わたくしにもわかりかねますが、皇女殿下のように可愛らしい方に好かれて悪い気のする殿方なんておられないでしょう」

「そう…かしら?」

「皇女殿下はこんなにもお可愛らしくあられるんですもの、もしかしたら王も皇女殿下のことを憎からず、と思ってらっしゃるかもしれません」

「そうかしら。そうかしら!そうだったらいいのに」

 

嬉しそうにはしゃぐ紅玉を、変わらぬ笑顔で見つめ続ける。

 

「ずっとこの国にいてくださいと言われたのでしょう?」

「えぇ!それはもしかして、そういうことなのかしら!!」

 

シンドバッドはアキラの夫だ。
そこに確かに愛はある。

けれど、優先させるのはいつだって国だ。

シンドバッドが紅玉にこの国にずっといてもいいと言ったのは、つまり、そういう意味なのだろう。
国のために必要な、利用価値のある人材と見込まれたのだ。
王であるシンドバッドがそう認めたなら、宰相であるアキラも紅玉をシンドリアに引き込むのみ。
そこにアキラの感情なんていらないし、、もう慣れてしまった。

 

「シンドバッド王の望まれるまま、どうぞこの国にいつまでもいてくださいませね」

 

我々臣下一同も練紅玉皇女殿下を歓迎いたします。
頭を垂れ、アキラはシロツメクサの冠を手に持ち紫獅塔の中へ入っていく。
紅玉もシンドバッドに会えなかったもののそれなりに満足できたようで、食客として宛がわれている緑射塔へ戻って行った。

 

*

 

アキラと紅玉が話していた少し上、紫獅塔のバルコニーに二人の男の姿があった。
いつしか吹き荒ぶ風は冷たい夜風へと変わっている。
手すりに背を預けるように持たれているシンドバッドに、側に控えていたジャーファルが責めるように言う。

 

「貴方がアキラにあんなことを言わせているという自覚はあるんですか」

 

シンドバッドはくっと喉で笑い、頭上に広がる夜空を見上げた。
王宮の一部が否応なしに目に入る。

 

「本当に、俺には過ぎた嫁だな」

 

 


2012/05/13

単行本派なので本誌であのシロツメクサの冠がどうなったかはしりませんが、こちらでは魔女が王さまへ届けました。約束したからにはきちんと届けます。魔女は恋する女の子の味方☆
王さまがあぁいう手段をとるのなら、魔女だって王さまの意を尊重します。
自国内でしか妻ではないけれど、別にかまわない。それが王の意思なら、魔女は王に従うだけです。
宰相として国のために日々政務をこなすことに不満はありません。
いいんだ…、と思う魔女と王さま。やっぱりこの二人はシリアスです。

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