KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。
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≪ ぶたれたい。どえむになってほしい。ぶたれたい。 | | HOME | | 生きてます ≫ |
お子さま現パロで、おやつの話し。
わたしは本当にやれと言われない限りやらないので、どうにかしてください。
ついったとかでもらったリクエスト覚えてるんだよ、覚えてるけど_(:3 」∠)_
「ほれ、今日のおやつだ」
「わーい、りんごー!」
きゅっと蛇口を上げ、流れる水を止める。
軽くソレを振ることで水気を切り、サッチはテーブルの子供用のイスに行儀よく座っているコトリに向かってソレを投げた。
ちょうどいい位置に投げられた今日のおやつを喜々として両手でキャッチしたコトリは、ちゃんといただきますと言ってからかじりついた。ま
るい赤いリンゴ。赤いということは皮がむかれていない、丸のままということとなる。
それをコトリはしょりしょりとかじっている。
一口ごとに赤い皮の部分が小さな丸の形で削られていき、あっという間に薄い黄色の実の部分だけになった。
垂れる果汁さえも無駄にしないよう、時折ぺろぺろと果汁の垂れてきた自分の手のひらや腕をなめている。
美味しそうにリンゴをかじるコトリを見て、芯を置くための小皿を置いてやり、今日のサッチの保護者としての責務は果たされた。
責務と言うのはコトリにおやつを与えるというもので、毎日その日家にいるものが負担している。
最初のうちはサッチ自身も楽しんで焼き菓子や生菓子など凝ったものを作っていたのだが、次第に飽きてきて今に至る。
いつものように腹が減ったと寄ってくるコトリだったが、何か作るのも面倒だったので誰かがもらってきたであろうリンゴの入った段ボールが目に入った。
これでいいか、と適当につかみ、冗談半分本気半分でコトリに向かっておやつはこれだと投げた。
落とすことなくキャッチしたリンゴを見て、サッチを見て。
そのままかじればいいと言ってやれば、ふんふんと一度においをかいでからコトリはリンゴにかじりついた。
「どうだ」
「ぐー!」
どうやら果物を丸ごと与えてもおやつと認定されるらしい。
初回なのでどこまで食べればいいか、種や芯部分は残すなど食べ方を伝授し、食べ終えるまで見守ってやる。
一度目さえどうにかなれば後は自分で勝手に食べるだろう。
果物なら市販の菓子よりも健康に良さそうだし、食べすぎもさほど気にすることはない。
リンゴひとつまるまる与えておけば、それが今日のおやつ一回分の量となる。
袋菓子を一袋丸ごと平らげるとか、ケーキ1ホール全て食べつくすとかと比べたら安上がりかつ余計な心配がいらない。
強いて難点を挙げるなら、リンゴひとつと言えど子供には少々大き過ぎるということだろうか。
でもまぁコトリにしたらなんてことない量だし、夕飯までには消化されるだろう。
安くて、手軽で、量があって、うまい。
美味しそうにリンゴをかじるコトリを見て、サッチはうんと頷いた。
*
「ほれ、おやつだ」
「リンゴだー!バターとラム酒とシナモンあったよね!レーズンこないだ食べちゃったっけ?」
コトリは嬉しそうに投げられたリンゴをキャッチすると、いそいそとキッチンの壁にかけてあるエプロン(小学校時代家庭科で縫ったカエルのイラストのプリントされたエプロン、かなり成長したので丈が短い)を着用し、シンクの水を出す。
石鹸で綺麗に手を洗い、それが残らないよう丁寧に水で流すとよし、と意気込む。
まな板を使うことなく果物ナイフで穴を開けないように芯だけをくりぬき、皮の部分をフォークで軽く差し穴をあけた。
リンゴをくりぬいた部分にバターと砂糖詰め、ラム酒を少々注ぎシナモンをたっぷりふりかける。
中身の入れ替わったリンゴに最初に切り分けておいたヘタ部分で蓋をし、耐熱皿へ入れ、オーブンでじっくり焼く。
途中二度果汁とバターの混ざった液をリンゴ全体に満遍なくかけてやり、30分ほど待てば焼きリンゴの完成だ。
空き時間に片づけをしてもなお余る時間で鍋に牛乳を入れ火にかけ、沸騰寸前で止めてホットミルクを作る。
自分のマグを取り出しそれにこぼさないよう注ぎ、鍋を洗って皿を用意していたらちょうどオーブンが鳴った。
両手にミトンをはめ天板を取り出し、耐熱容器から柔らかくなったリンゴを崩さないように用意していた皿に移し、溶けだしたバターと果汁を上からかけてやる。
残りの片づけをして席に着けば、ちょうどいい温度までさがった焼きリンゴがコトリを待っていた。
これでバニラアイスとかホイップがあればもっと美味しいんだけどね、と思ったが、バニラアイスは先日ファミリー用を食べきってしまったし、ホイップは常備してあるものではない。
そんなものなくても美味しいからいいや、とコトリは手を合わせた。
「いただきまーす!」
用意していたナイフとフォークを握り、お手製の焼きリンゴに入刀しようとした瞬間だった。
「一口くれ」
ずっとリビングにいたサッチが手を伸ばしてきた。
新聞を読んで我関せずだったくせに、いざ料理が完成するとかかわってくる。
気にせずコトリは焼きリンゴをナイフで切り、フォークで刺して口へ運ぶ。
バターと砂糖がしっかりしみ込んでいて、リンゴの酸味も消えていない。たまにあるレーズンの触感が楽しくて、最後にふわりとシナモンが香るいい出来だ。
もぐもぐと咀嚼するのをやめることなくこっちを羨ましそうに見てくるサッチに言う。
「作る前に言ってくれればサッチの分も作ったのに」
「一つ丸ごとはなー。ほれ、寄こせ」
「やだよ、そう言って半分以上食べるじゃん」
「食わねぇって。いいだろ、ちょっとくらい」
「だーめー」
とはいいつつも、サッチには前科があるので信用ならない。
ホットミルクを一口飲みほっとしても、コトリがサッチに焼きリンゴを分け与えることはなかった。
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