KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。
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以前ちょろっと書いた進撃のホモのわりとまともな話を手直ししました。
アニメ見終わった後、こりゃぁ綺麗事だけじゃおわらねーわ、となりまして。
アニメよかったですね、原作未読なので毎週楽しみにしてました。
「なぁ、アニちゃん。俺はアニちゃんのこと好きだったぜ」
少しだけ沈んだ声で、でも笑いながらハリスは言った。
ちゃんと笑えているかは、幸か不幸か誰も見ていない。
「対人訓練、また組んでやろうぜ。今度こそ俺が体触ってやっから」
いつもこっちが触る前に投げられてたもんなぁ、と苦笑する。
思い出す記憶は数年前の色鮮やかなものから、数日前までの血の色を含む。
「俺はこれからちょっとアレでアレな任務に就くけどよぉ、待っててくれな」
アニに向けて手を伸ばしたけれど、アニに触れることなく、少し空中を彷徨ってハリスは手を元に戻した。
地下にあるこの空間の空気は湿っていて少し饐えた臭いがして、冷たい。
「こんなことになっちまったけど、アニちゃんが少しでも俺らのことを好きでいてくれたら、嬉しいなぁ」
よっ、と立ち上がると、出口に向かって歩き出す。
最後、一度だけ振りかえる。
人間である彼女をもう一度見ておきたかった。
「眠り姫は王子様のキスで目覚めるっつーけど、俺のキスが嫌だったらそれまでに自力で目覚めとけよ」
じゃあな、と水晶の殻に閉じこもるアニに手を振った。
アニが女型の巨人として捕獲作戦が実行され、結果は失敗とも成功ともいえる。
捕獲という点では成功だし、捕えて情報を聞き出すという点では失敗だ。
アニは強固な殻に包まれた眠り姫になってしまった。
現在は巨人化しても身動きが取れなくなるような深い地下に鋼の鎖で巻かれている。
アニは巨人だ。
巨人と化し、調査兵団の敵となり、兵を殺し、人を踏みつぶし、人類の敵となった。
仲間がどれだけ殺されたか、ストヘス区で捕獲作戦の際どれほどの人が巻き込まれたか。
ストヘス区については調査兵団による人災という人もいるだろう。
ストヘス区で捕獲作戦を行わなければここまで被害が甚大にならなかったのも事実だ。
その代償として得たものは、女型巨人の捕縛・エレンイェーガーの処刑回避、この二つだけ。
この二つがどれほどの価値があるのか、誰もわからない。
ただ、アニが敵という事実だけは浸透してしまった。
実際問題、アニを許せるか、と問われれば返答に窮する。
どれだけの人間が犠牲になったか、彼女に殺されたかという道徳的理由。
どれだけの仲間が彼女に殺されたかという私怨。
共に過ごした訓練兵時代の思い出、彼女と交わした会話。
色々なことが複雑に絡み合って、どうしたらいいのかわからない。
困惑し、当惑し、すべて投げ出したくなってしまう。
「なぁ、ジャン。お前何かをめちゃくちゃにしたいときどうしてるよ」
「とりあえず枕叩くな」
「そっか。ちっと俺に抱かれてみねぇ?」
「質問の意味ねーな」
「まったくだ」
はは、と笑いあった後、無言で歩きだした。
2013/06/20
2013/10/06
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