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KLM

KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。

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ばかぁぁぁぁ!

多分明日は早く帰ってくるから、更新できるはず…!
できたら、吸血鬼3話更新予定。



友達の影響で、今まで抑え込んでたものが吹っ飛んだ気分です。
必死に必死に今まで我慢してたのに、ばかっ!!
腐女子じゃないよ、単なる夢見る乙女だよ、って公言できるくらいには腐要素は抜けてたっつーか、押しとどめてたのに…!


以下、腐ってるので若干注意。





うわぁん、利土井が好きですが、なにか!?
ぶっちゃけ、誰より早く忍たまはまってたさ!
大学入った当初位に忍たま絵を見てたら利土井サイトに行きあたって、やべー、これやべーwww
ってなってて、はっ、いけない、わたしは夢見る乙女よ!って理性で押しとどめてたのに!
最近忍たまが流行ってるなー、と思っても見て見ぬふりしてたのに!
はまっても、4年のアイドルかわいいわー、いいわー、って思ってただけなのに!
話題ふってくんなよ、ばかぁぁぁぁ!

あれ以上いい夫婦なんていないだろー!?
利吉さんがエリート忍者でも、実質年下のおこちゃまなんだから、土井先生に会えたら嬉しくってずっとうきうきしてるし、土井先生はなんか嬉しそうにしてるなー、ほにゃーってなってたらいいんだ!幸せすぎる!何が悪い!



…すっきりした、ちょっとだけ。



以下、おそらくもう続きを書かないであろうBASARA連載、たくさん一気に。
必ず注意書きをお読みください。
趣味に走りすぎて迷走してます。


「血狂い」 は少し異色なお話ですので、こういったページを用意させていただきました。



1、闇のパープル・アイのパロディです。
80年代の作品なので、ご存知ない方も多いと思います。
ですが、設定をお借りしただけですのでご存知なくても問題ありません。
その借りた設定はとても単純なもので、

主人公が豹に変身します。

これだけです。
・変身は本人の意志で自由にできます。
・人間、豹、どちらの姿も自由自在です。
以上の二点を頭に置いておいていただければ、それで十分。
(倫子が主人公で、慎ちゃんが真田で、小田切さんが佐助でもいいなと思いました)
(昔ドラマもやってました。普通に面白いです/宣伝)



2、主人公が人を襲います。
豹に変身した主人公は、食事のために人を襲います。
ゆえに、カニバリズムをご存知ない方、知っていても許せない方、我慢できない方、は回れ右でお願いします。
他にもグロテスクな表現があるかもしれないので、こちらが苦手な方もバックしたほうがいいかと。



3、名前変換がほとんどありません&キャラがほとんどでてきません。
お話が主人公の独白という形式を取っているので、名前を呼ばれる機会がありません。
~十話ほどまでキャラと出会うことがないので、BASARAキャラも登場しません。
半ばオリジナル小説となっています。



以上の3点を許せる、許容できる方はこのままレッツゴーです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!





私は父を戦場で喪い、母も早くに喪いました。
それでも、幼いながらも私は生きています
住む家を、父は遺してくれました。
生きる術を、母は遺してくれました。
この身体を、父と母は私に与えてくれました。

この身体に流れる古く熱い血が、私を生かします。

 

夜目が利くのは便利である。
相手は闇夜に戸惑い、動きが鈍る。

体毛が黒いのは有利である。
相手が灯りを持ち闇を濃くし、その闇に溶けることができる。

大きな体躯は絶対である。
相手は私に比べればとても小さい。

鋭い爪と尖った牙は道具である。
人間を切り裂くのに、とても便利だ。

 

月が仄かに辺りを照らす夜、私は木の枝に寝そべって尻尾を揺らしていました。
少し首をあげて鼻をひくつかせれば、人間の匂いがします。
ぺろりと牙を舐めて、獲物を見定めます。
出来るなら、子供がいい。
食べるのに子供の肉は甘く柔らかく美味なれど、可食部が少ないのと骨が小さくて厄介なのですが、美味いことには変わりないので子供がいい。
ただ、子供ばかり食べていると子供が少なくなり、村の雰囲気も悪くなるのでそう子供ばかり狙うわけにもいきません。
だとしたら、男を狙おう。
言うほど腹が減っていないので、脂ののった女より歯ごたえのある男を食すのも悪くはない。
私は、心の中で笑いました。
獣のこの顔では笑う事はおろか、表情を表す事が出来ません。
それでも、私は笑いました。

音もなく木から滑り降りて、茂みに身を潜めます。
目の前にちょうど良い男がいるのです。
この時代にしては悪くない体つき、匂いも嫌なにおいではない。
また私は笑いました。
目の前を男を食すよりも、この爪で腹部を裂き、この牙で喉元に食らいつきたいという欲求の方が勝るのですから。
食事よりも非道の行いのほうが好きなのです。
食らいついた咽喉から空気の漏れる音が、引き裂いた腹から溢れ出る血を舐めることが、爪で心臓を引き裂くその瞬間が。
私は何よりも好きなのです。

さぁ、今宵の私も餓えています。

 

貴方の血を私に下さい。

 

 

 

2009/05/06

 

 

 

 

 

私の一族は、ごく稀に獣に変化する力を身につけたものが生まれます。
私の母がそれでした。
母は金色の大きな獣に化けました。
大きくて、金色で、猫のようにしなやかな体躯、黒の斑点、白く美しい牙に、私はとても憧れました。
そして幸いにも、その力は私にも宿っていたのです。
私は母とは違い黒色の獣でしたが、紫の瞳だけは母と同じで気に入っております。
いつぞや誰かが私の姿を見て “豹” と叫んだことがありました。
それがこの獣の名でしょうか。
だとしたら、とても美しい名だと思います。

私は現在一人ですが、父と母に沢山愛してもらったので寂しさはありません。
村の人間は何かと私にかまってくれようとしますが、家畜と仲良くする趣味はないので放ってます。
人間は私の餌でしかありません。
私の腹を満たし、興をそそる存在であり続ければそれで良いのです。

 

私は今日も今日とて獣に転じて外を駆けました。
この黒い毛皮を隠す夜に、近く戦場となっている地を目指して。
今日は新月です。
月さえ隠れた常闇は、私の姿を隠す恰好の暗幕。
その闇に乗じて幾らか人間を狩ろうと思いました。
常日頃、私は人間を狩りすぎぬように数を制限して残虐行為に及んでおりました。
いつか思う存分人間を狩ることのできる日は来ぬのだろうか、どいつも思っておりました。
そこで、閃いたのです。
人間が人間を殺す場なら、私の蛮行を人間に知られぬことなく、尚且つ好き放題にできるのではないか、と。
するとちょうどいい具合に近くで戦禍があるというではありませんか。
私は喜び勇んで戦場へと駆けました。

少し走ったところで、鬱蒼と生い茂る木の上へ飛び乗りました。
枝から枝へと渡り、少し葉を散らせながら飛び移って行きます。
地を駆けるのも好きなのですが、こうして高いところを飛ぶのも好きです。
人間の視点よりはるかに高い場所を駆ける優越感でも感じるのでしょうか。

目的の場所、つまり戦場という人間が人間を殺す場所につきました。
血と、炎と、泥の臭いが辺りに充満しています。
叫び声と、悲鳴と、咆哮が場に満ち満ちています。
人間の息遣い、馬の嘶き、金属のぶつかり合う音。
あぁ、これが戦場というものなのですね。
とても、とてもとても、とてもとてもとても、楽しそうな場所じゃないですか。
私は、笑う事の出来ない顔で笑いました。
そして堪え切れずに、咆哮をあげました。

さぁ、楽しい狩の時間です。

 

 

 

 

2009/05/06

 

 

 

 


一人、また一人と茂みへ引きずり込みます。
どれだけ叫び声を上げようと、ここは戦場。
そのようなものは数多の場所から聞こえてくるので、此処で叫ばれたってちっとも問題ありません。
普段はあまりじっくりと見ることのできない最期の表情を眺めて、恐怖を煽るように牙と爪を見せつけて、さあ、死んでください。

正直、戦で人間を殺すのは楽しい反面厄介なことも沢山ありました。
その身を守る甲冑が、功績をたたえる御旗が、命を守る武器が、邪魔でした。
私の爪と牙は強く鋭いので、安い甲冑なら貫くことができますが、それでも若干ながら爪が痛いのです。
人間は弱く脆いものですが、このような戦いの場では、時折強い人間がいます。
気配を断ち闇に身を溶かすこの私を目ざとく感知し、攻撃を仕掛けてくる輩がいるのです。
冗談じゃない。
私は一方的な虐殺を、鏖殺を好むのです。
反撃というものは好きではありませんし、何より私より弱者である人間如きに攻撃されるというのが非常に癪に障ります。
腹の立った私はそれらの人間は、八つ裂きにしてやりました。
それで少しは留飲が下がるというものです。

頭蓋骨を割って脳味噌をひと舐めし、首を引き裂いて血を啜り、太腿を少し齧って、さぁ次。
獲物はいくらでもいるのです。

暫くの間人間屠り殺したこの場所は、阿鼻叫喚の地獄絵図(見たことはないですが)のようでした。
地面は赤黒く、周りの木々には食い散らかした臓物が所々こびり付いています。
少ししか食べてないので、人間の食べ残しがそこかしこに散らかっています。
数は数えられないのでわかりませんが、両の手では足りないでしょう。

楽しかった、久々に、楽しいと思える時間でした。
大分時間が経ったのではないでしょうか。
楽しさの余り、思わず時間を忘れて行為に没頭してしまいました。
肉のこびりついた爪をぺろりと舐め、辺りの様子を確認します。
すんと鼻を鳴らしてみましたが、辺りに充満する血の匂いと自分の身に染み付いた返り血で鼻がききません。
空を見れば、うっすらと白くなってきています。
あぁ、夜が明ける。
夜が明ければこの黒い体躯はとても目立つものになるでしょう。
いけません、いけません。
人間に姿を見られてはいけません。
それだけは、決していけないことだと母が言っていました。
私は急いで、その場から立ち去ろうと思いました。

けれど。

あと一人だけ、屠る時間はあるのではないでしょうか。
そういえば咽喉が渇いたような気がします。
血を、新鮮な生き血を飲める機会は滅多にあるものでもなし。
今日というこの日くらいは、贅沢をしても良いのではないでしょうか。
あと一人くらい、殺して首をもいで、血を啜って、最後だから心臓を頂いても良いのではないでしょうか。

 

そう、あと、一人だけ。

 

 

 

 

2009/05/06

 

 

 

 

 

 

 

屈辱です。
完全なる敗北です。
この敗走はとても遺憾です。
たかが人間のくせに、私に刃向うとはなんということでしょう!

私は左脇腹に三筋の刀傷を受けました。
硬い毛皮と皮膚に守られ、そう深くは斬られませんでしたが、血が溢れだし痛みを伴う事実に変わりありません。
人間に、餌という立場にある人間に斬りつけられたのです。
痛くて、悔しくて、獣としての矜持を叩き折られた気分でした。
人間であり獣でもある私は、人間よりも高みに居る生物だと思っておりました。
なので人間如きが、獣である私に傷をつけられるわけがないと、慢心していたのは確かです。
けれども、人間如き、家畜如き、人間なぞ、私の餌でしかない生物が、この私を傷つけるなんて。
えぇい、腹立たしい。
腸が煮えくりかえるとはこのことでしょうか。

私は痛む腹を押さえ、自分の住む村まで戻って来ました。
周りに誰もいないことをしっかりと確認してから、獣から人間へと戻ります。
四肢から手足へと変化し、五本の指で引き戸を開き自分の家へと入ります。
人間へ戻った瞬間は素っ裸なので、とりあえず抽斗から小袖を引き出し羽織りました。
そして、小箱から手拭いを取り出して井戸へと向かいます。
獣から人間へ変わった瞬間はその境界が朧で、草鞋を忘れて裸足で外に出ることもしばしばです。
二本の脚で立ち、腕と指を使って井戸から水を汲み、その水に手拭いを浸し、傷を拭います。
ずきりと傷が痛みましたが、それよりも激怒の情が勝ります。

傷口洗い、適当な布を裂いて包帯を作り、それを腹に巻きました。
痛みはするものの、この程度ならすぐに治るでしょう。
それよりも、このやり場のない怒りをどこへ向けたらよいのでしょうか。
本来ならばこの傷をつけた張本人を貪るのが一番の打開策なのでしょうが、悔しいながら、まっこと遺憾ながら、あれは強いと認めざるを得ません。
人間のくせに、餌のくせに、あの人間は、強かった。
背後から飛びかかったのに、身を翻して斬りつけてきました。
まさか気付かれるとは思っておらず、回避することもできずに私は唯斬られました。
即座に体勢を立て直し森へ逃げ込んだのはいいものの、これでは尻尾を巻いて逃げたとしか言えません。
斬りつけられ、切り返す間もなく背を向け逃亡したのです。
私は敵を倒すという矜持よりも、己が保身に身を窶し獣としての矜持を捨てたのです。
そんな己が腹立たしくあり、その苛立ちをあの人間へ向けているにすぎません。

板の間に布団を敷き、くるりとその真ん中で丸くなります。
夜更けまで起きて人間を狩っていたので、疲れました。
腹は膨れ、程よい興奮の後訪れる睡魔に私は身を任せました。

眠りました。

眠って、全てを過去のものにしようとしたのです。

 

 

 


2009/05/06

 

 

 

 


どんどん、と家の扉が叩かれる音で目が覚めました。
いつもなら足音で目覚めたはずなのですが、今日ばかりは相当深い眠りについていたようです。
はい、と返事をして、手早く小袖を着て引き戸を開けました。
目の前には、この村の人間じゃない人間がいました。
人数は、二人。
誰か、と起きぬけの頭で考えていると、ふと腰に挿してある刀が目に入りました。
細長い形状のそれを見た瞬間、頭が急に覚醒した。

この人間は、街の武士だ。

 

「この辺りで獣を見なんだろうか」

「度々姿を消す者がおるそうだが」

 

どくんどくん。
心臓が音をたてました。
武士が、何故。
何故と考えても、行きつく結果は一つしかありません。

昨日の戦場で、姿を見られた。

己の失態に、唇を噛むことしかできません。
血の気が引いていくのがわかります、反面、心臓が五月蠅い。
あぁ、どうしましょう、どうすればよいのでしょう。
いずれ獣の正体が露見しましょうか、獣が私だと、いつ世間に広まりましょう。
考えるだけで恐ろしい。

母は常日頃言っていました、人間にだけは正体を知られてはならないと。
人間は下等生物故、私たちのような力の強いものを恐れ、群れをなして排除しようとしてくるそうです。
人間とは未知を恐れ、不明を忌み、非常識を嫌います。
私や母のように獣に転じ、人間と獣という二つの形態を持つ私たちを恐れるそうです。
なので、獣の私を見つけられたら、異形と呼ばれる私は全ての存在を消されてしまうそうです。
人間なぞ恐るるに足らず。
けれども亡き母の言いつけだけは守りたいと思うのです。

 

「大丈夫か、顔が蒼いぞ」

 

人間が、私に手を伸ばします。
やめろ、貴様らに触れられるのもおぞましい。
家畜が、私に触れようなどと、やめなさい。

ぱしりと音がして、私は武士の方の手を払いのけました。
その時、その人間がどのような表情をしていたのかは私にはわかりません。
うつむいて、震える体を押さえ、経つことが儘らなくなった足を支えるのに必死だったのですから。

武士が去って、私はその場に崩れ落ちました。
震える体を両の腕で抱き、知識の乏しい頭で必死に考えました。
もう、ここら辺に住むのは無理なのでしょうか。
きっと明日にも武士が群れとなってこの一帯を捜索するのでしょう。
そうすれば、私は…、いいえ、いいえ。
良く考えなさい、私は獣に転じることができます。
けれども、普段は人間として生活しているじゃないですか。
だとしたら、幾らここいらを捜索されようと私が人間でいる限り見つかることは有り得ません。
落ち着け、落ち着け。

要するに、私が獣へと転じなければよい話なのです。

それだけの話じゃないですか、何を慌てる必要があるというのです。
落ち着きなさい。
深く息を吸って、はきだします。
大丈夫です。例え武士が攻めてこようと、私なら全て蹴散らして逃げることだって容易。
そう、何も案じることはありません。
私は、獣なのですから。

 

 



2009/05/06

 

 

 

 

 

夜が来ました。
私は夕飯を食べることもなく、布団を敷いて丸まります。
もともと、二三日なら食べ物を食べなくても平気な方です。
ましてや、昨日は好きなだけ食べたのです。
頑張ればしばらくの間は水だけで生きていけることでしょう。
人間が食べるような穀物は、私は所持していませんし、あまり食欲をそそられるものではありません。
ですから、今宵はおとなしく寝てしまうのが得策かと思います。
目を瞑れば、深い闇が待っています。

夜半、がさりという物音で目が覚めました。
獣である私は五感が人間よりも優れており、薄い隙間風の吹くあばら家では外の音など筒抜けも良いところです。
私はしばらく周囲の物音に耳を傾けました。
さわさわと木々の揺れる音、ぴちゃんと井戸の水の跳ねる音、そして、人の気配と足音を感知しました。
私の体内時計が正確ならば、今は夜更けにはまだ早い、深い夜の時間。
なのに、何故人が外に居るのか。
昼間の武士のこともあり、緊張が私の中を駆け巡りました。
どくどくと心臓が脈打ちます。
なにも案ずることはありません、だって今の私は人間なのですから。

ぴくりと、脳が何かを感知しました。
それはじわじわと身体を侵食していき、仕舞いには足の先まで痺れさせました。
においが、するのです。

人間の匂いが。

 

私を弑そうと刀を振るった人間の匂いが。

 

私は咄嗟に、手で口を塞ぎました。
意思とは無関係に呼吸が荒くなるのがわかります。
どきどきと脈打つのは、心臓でしょうか、傷つけられた脇腹の三本の刀傷でしょうか。
汗が、こめかみから顎へと伝うのがわかります。
今、すぐ近くに居るのです。
あの人間が、私を殺そうとした人間が。
私はどうするべきでしょうか。
このまま無視するのが得策か、それとも。

それとも、飛びだして牙に爪に、その憎い血を吸わせ高ぶった気を鎮めるのが良いのか。

手を口に押し当てたまま、ぎゅっと握ります。
みっともなく震える手は、いったいどんな感情を現しているのでしょうか。
獲物を屠る武者震いか、恐怖からくる脅えか。

気付けば私は気配を殺し、そっと表へ出てました。

 

 

 


2009/05/07

 

 

 

 

 


足音は無音、呼吸は浅く、闇夜に体を溶け込ませ、気配を断つ。
じりじりと人間に近づき、逸る鼓動を落ち着かせようと可能な限り静かに深呼吸を行いました。
すんと匂いを嗅いで、夜目の利く眼でしっかりととらえました。
あぁ、間違いありません。
あの人間です、あの人間です。
人間の分際で私に刃向い、尚且つ傷をつけたのはあの人間です。

どうしてやりましょう。
闇の中に引きずり込んで爪で引き裂いてやりましょうか。
それとも上から覆いかぶさって首を食いちぎってやりましょうか。
最早私の中に隠れてやり過ごすという判断は残っておりません。
私は獣です。
獣の本性が求めるのです。
血が欲しいと乾く咽喉が、肉を寄越せと餓えた腹が、命をくれろと殺戮を求める本能が。
叫ぶのです、獣としての私が。

全身に熱い血が駆け巡り、身体が獣に転じます。
地面に這いつくばり、手足が四肢へと転じます。
二足歩行から四足歩行に変わります。
視界が低くなり、身体がとんと軽くなります。
ぺろりと配列が変わり、鋭く尖った四本の牙をぺろりとざらついた舌で舐めました。
漆黒を身にまとう獣こそ、私なのです。

姿勢を低くして、人間の様子を伺います。
見たところ、今日は刀を一本しか持っていないようでした。
以前は片手に三本持っていたはずですが、どうしたのでしょうか。
雪辱を晴らしたいので人間には万全でいてほしいのですが、どうもそういうわけにはいかないようです。
根本的にはあの人間を殺せればいいので、多少のことには目をつぶるという事にしましょう。

夜風が毛を撫でてゆきます。
静かすぎるほど静かなのは、夜だからでしょうか。
心臓は大分落ち着きましたが、それでもまだ多少痛いです。
もう一度辺りの匂いを嗅げば、…人間がいるにはいるみたいです。
何人か、こんな夜中に出歩くなんて、餌になりたいのでしょうか。
いいえ、よそ見をしている暇はありません。
今は目の前に居る人間を狩ることだけを考えます。

濃い影に身を溶かし、気配を断ち、後ろ脚に力を込め、狙いを定めます。

準備はできました、そちらの覚悟はよろしいでしょうか。

 

 


2009/05/11

 

 

 

 

 


最初の一撃で仕留めるつもりでした。
けれどもあの人間が手強いのは百も承知。
気配を消して勢いよく飛び出したにもかかわらず、人間はさっと私を避けてしまいました。
私は飛びだした勢いのまま、再び影に身を落とします。
人間は一本の刀を抜いて、戦闘態勢に入りました。

この闇夜では、人間は私の姿を視認することは難しいでしょう。
私の闇を纏ったような漆黒の毛皮。
今日のような暗い夜によく馴染みます。
闇と一体になった私を見つけるのは、同じ夜目の利く獣ではないと無理でしょう。

私はより早く跳躍します。
勢いと体重を爪にのせて、人間に飛びかかります。
目標は、人間の持つ刀です。
これほど暗くても光る刀身は、なんと恐ろしいものでしょうか。
あれは私を殺すために振るわれるのです。
あぁなんて恐ろしい。
そんな人間の身に余る武器は、私が奪ってあげましょう。
人間は唯、脆弱であり続ければよいのです。
私の餌で、暇つぶしで、おとなしい人間であればよいのです。

がきん

爪に重い衝撃が走りますが、すぐに軽くなりました。
折ってやったのです、人間の唯一の武器である刀を。
武器を持たない人間の脆いことを知っています。
少しこの爪をかけるだけで、簡単に裂けてしまう事を知っています。
私は刀を折ったあと、また繁みの影に身を潜めました。
人間は焦っているようでした。
けれど、冷静でもありました。
慌てふためき愚行に走ることもなく、混乱し狂乱するでもなく、焦る内情は見の内に秘め、極めて冷静でありました。
気配に敏い私はそれを感じることができました。
私は人間が冷静なのに驚きましたが、どこかしら興奮するのを覚えました。
私に傷をつけた人間なのですから、これくらい気丈に振舞ってくれないと、これくらい往なしてくれないと、張り合いがありません。

 

第二撃、行きますよ。

きちんと受け止めてくださいね。

 

 


2009/05/12

 

 

 

 

 

 

 

狙うは足。
足の肉を抉って、その場から動けなくしてやりましょう。
動けぬ自分に迫る敵。
さぞ恐怖が煽られることでしょう。
苦痛にゆがむ表情を見せてください、その命が絶える瞬間まで、私を楽しませてください。
人間が蟻を潰すかの如く、何の意味もなく、絶対の強者が弱く無抵抗なものの命をただ奪ってやりましょう。

ざっと、私は茂みから飛び出しました。
大きく口を開けて、足に飛びかかります。
人間が目の前に迫って来ました、が、背中が殴られ視界が揺れます。
なんとか着地したのもつかの間、本能が危険と叫びその場から離れました。
息を整えて人間を見ると、私のいた場所に刀が刺さってました。
刀は、一本だけではなかったのですね。
騙されてしまいました、人間如きが、狡い手を。

 

「漸く姿をとらえたぜ、beast。お前が人喰いか」

 

ぐるる、と私は唸りました。
男がしっかりと私を見据えます。
私も男を睨みます。
星明かりの下で初めて正面から見る男は、なかなかどうして男前じゃありませんか。
味と顔は比例しないのですが、やはり食べ物は見た目も大切です。
精悍な顔を見て、私は食欲がそそられるのを感じました。

 

「黒い毛に大きな体躯、ふん、野犬か何かと思っていたが、本物の獣とはな」

 

男の言葉が終わるのを待たずに、私は男に飛びかかりました。
私を犬畜生と同列に扱うのというのですか。
あんな低俗な生物と同じように見られるなんて、私に対する侮辱です。
なにも考えずに飛びかかったのですが、男の肩を切り裂くことに成功しました。
浅くではありますが、血のにおいが漂ってきます。
あぁ、なんて美味しそう。
待っていてください、すぐに殺してあげますから。

 

「人喰いなだけあって、流石に襲い慣れてるな」

「だが、俺も殺しにかけちゃprofessionalだ」

「今夜は立場逆転でこっちが殺してやるよ、Are you Okey!」

 

わけのわからないことをいう男です。
地方の人間でしょうか、それとも痴呆の人間でしょうか。
外見がいいから中身が美味しくなるわけではないのですが、頭のほうは病気を持ってるかもしれません。
念のため、脳味噌は食べないようにしなくては。

なんてちょっと思案していたら、今度は男が飛びかかって来ました。
手にはあの時と同じ、沢山の刀を持っています。
けれども、片方の手は一本足りません、私が折ってやったからです。
私は私に向かってくる男に突進していきました。
振り上げている片方の二本の刀を、また折ってやろうと思いました。

 

 

 

2009/05/16

 

 

 

 

 

 

 


私はぐっと立ち上がりました。
しくじりました、しくじりました。
まったくもって誤算でした。

男は大層強う御座いました。

私は片方の後ろ足を斬られ、身体の側面を斬られ、片方の前足も斬られました。
先日の怪我の比ではありません、深かく深く斬りつけられました。
今も立ち上がるのがやっとです。
最も深く斬りつけられた後ろ足は跛を引きながら歩く無様な姿です。
私は目の前がくらくらしましたが、男を見ました。
男も満身創痍でした。
当然です、私が只でやられるわけはありません。
押し倒し、牙を剥き爪を立て、刀を折って血を舐めてやりました。
男の持つ刀は既に二本、首筋には抉られた傷、肩と脇腹にもいくつか同じもの。
刀を構えるのも辛いでしょう、傷ついた肩に重い刀を持ち上げることが苦痛でしょう。
満身創痍は男も同じです。
私は脚力を失い、爪に乗せる勢いを失いました。
男は腕力を失い、刀を振るう勢いを失いました。
あと少し傷つけるだけで、私は男を喰らう事が出来るでしょう。
ただ、それを為す前に男は私を屠るでしょう。

私が先か、男が先か。

朝日が昇るのが、合図でした。
私は血が溢れだす足に力を込め、最後の跳躍をします。
男は血が滴る肩を動かし、刀を構えます。

 

 

 

2009/05/16

 

 

 

 


私はまたもや、敗走していました。
短期間に二度の敗走は、最早自分に対する憤りしかありません。
私は無敗の獣、無敵の支配者、無有の存在。
このような己の醜態に耐えられません。
私は血が流るる足を引きずって、己が家へ戻りました。

男は。
男が追ってくることはないでしょう。
朝日が昇り、私がその光に目を眩ませた瞬間、男は私の首に最後の一撃を与えました。
おそらく首を切り落とすつもりだったのでしょう。
私は首を落とされるまいと、後ろ足で男の胴を蹴りました。
鉤爪で胴を蹴ったのです、さぞ深い傷がついたでしょう。
死に至らしめるには浅く、足止めをするには十分な傷です。

私は家の中に入るなり、人に戻り、敷きっぱなしだった布団の上に倒れこみました。
薄い布団の所為で、思い切り床にぶつかったような気がしました。
傷が痛くて思わず呻きました。
丸まろうにも傷が引き吊ったように痛くてそれも叶いません。
痛くて痛くて、全身が火の灯ったように熱いです。
じわじわと血が布団に沁みるのがわかります。

人の姿に戻れば、傷がどれほどに酷いのか改めて知ることができました。
獣の時は黒く硬い毛の所為で血に濡れても赤い血が目立ちませんでしたが、一度人の姿に戻れば全身血まみれでどこが傷なのかわかりません。
より赤色の濃い場所を探って行けば、傷が見当たります。
深くざっくり、けれども綺麗に斬られた傷が、そこかしこに見受けられました。
足と腕と首が、一番ひどいでしょうか。
首は男が落とすつもりで深く斬りつけたので、特にひどいかもしれません。
手当てをしなくては、と思うのですが、激痛により困難です。
あぁ、血を拭って、傷を洗って、血を止めなければ。
このまま血を流し続ければ、腕や足を失うことになりかねません。
運が悪ければ命を落とすこともあり得るでしょう。

私は歯を食い縛って立ち上がり、人の姿故小袖を素肌に羽織り外へ出ました。
外はもう、白く明るんできていました。
幸いにも我が家と我が家の井戸は村はずれの森近くにあります。
ここなら村の人間に血濡れた姿を見られる心配もありません。
私は痛む身体に叱咤して、井戸から水を汲み上げました。
じゃぷりと手に持っていた布切れを水に浸け、そっと身体を拭いました。
頭の奥まで響く激痛が襲いました。
けれどもここで傷を洗うのをやめれば傷が腐って手足が落ちてしまいます。
それだけは嫌なので、我慢して拭き続けました
無事な肌が姿を現してくるのと同時に、敗北の証しである刀傷も露見してきました。
悔しい、悔しい、悔しい。
いつしか私は泣いていました。

 

 

 


2009/05/18

 

 

 

 


身体を綺麗にしてから家に戻り、布を裂いて止血をしました。
それから布団の上に横になって、それから、それから。

それからの記憶は、ありません。

 

 

 

 

12
2009/05/18

 

 

 

 

 


俺を襲ってきた獣は、間違いなく戦場で見た獣だった。
馬の嘶きや悲鳴の絶えない戦場。
最初は、ただ単に討ち死にして人数が減ったのかと思った。
だが、明らかに倒れている人間が少ない。
何が、と思った瞬間に、そいつは現れた。

深い闇の奥から、紫に輝く双眸。

ぎらぎら怪しく光るそれは異彩を放っていて、すぐに頭の中で警鐘が鳴った。
抜いていた刀を構えなおした瞬間、衝撃が襲った。
すぐさま眼で追ったが、姿を捉えることなくそれは再び茂みへと姿を潜ませる。
遅れて肩から痛みが走る、肩を、やられたか。

ぐるる、と耳に届く音は間違いなく獣の声で。
恐ろしく大きな獣がいることが、わかった。
高さはないが、体は仔馬ほどあるだろう。
四本足の獣だ。野犬か、狼か。
熊ということはないだろう、熊にしては速過ぎる。
それに、熊のようにただ大きいだけじゃなくしなやかさも併せ持っていた。
跳躍し、地を駆け、大きな体躯、爪と牙を持ち、人を喰らう。
ここいら一体にそんな兇暴な獣がいるという話は、聞いたことがない。

ぎん、と刀が音を立てる。
硬い刀が、軋む。
獣は一体どれほど強靭な爪と牙を持ち合わせているのだろうか。
いつしか獣の猛攻に、俺は六刀を抜いていた。
合戦中でも滅多に抜かない六刀を、こんな獣相手に。

 

だが呆気ないことに、獣は一度斬りつけると逃げて行った。

 

一瞬で身を翻し、跳躍し、木々の間をすり抜けて姿を消す。
俺はその後ろ姿を見ながら、舌打ちをするしかなかった。
仕留め損なったか、あの危険な野獣を。
斬りつけた傷は浅い、あれではすぐに回復してまた人を襲うだろう。

俺も踵を返し、忘れていた戦場の指揮をとる。
決着はほとんどついていて、痛み分けというところだろうか。
撤退と声を張り上げて、馬に乗り陣に戻る。

 

 

 

 

 

2009/05/19

 

 

 

 


撤収時、ふと風に乗って生臭い、嫌な臭いが鼻についた。
戦場だから死臭がするのは当然のことだ。
血と脂と肉の燃える臭いと土の焦げた臭い。
だがこの生々しい臭いは何だ。
血腥い、肉そのものの臭い。
普通の戦場ではありえない死臭。
鼻を押さえながら、俺は乗ったばかりの馬から降りて臭いの元を探った。
鳥肌が立つようなおぞましさ、生物として死への忌避。
それらを全て押し留めて、臭いの強い茂みへ分け入った。

 

「God damn!! What's happen!?」

 

血、血、血、肉、肉、肉。
朝日が昇っていた所為で、その色の鮮やかさが際立っている。
なんなんだこれは、なんなんだここは。
腹が裂け臓物の飛び出た死体、死体、死体。
首がもげ脳味噌の垂れる頭、頭、頭。
手足が其処彼処に散らばり、裂けた肉片が木にこびり付いている。
死体の腹から溢れ出た腸が、だらしなく伸びている。
どこからか転がり落ちた白濁した目玉が、どこかを見ている。

気持ち悪い。

数々の戦場で何百という敵を弑した己でも、戦慄が走る。
こんな非道があっていいのか、こんな残虐が許されるのか。

 

俺は、幾重にも積み重ねられた幾十幾百もの遺骸の前に呆然としていた。

戦場で、茫然自失なんて、死と同義なのに。

 

 

 


2009/05/19

 

 

 

 

 

 


「探せ」

 

俺は馬の上から再び部下に命令した。
合戦の翌日から獣を探すように命を下してある。
見つかるのは時間の問題だろう。
何せ相手は手負いの獣だ。

薬を塗り、傷を縫い、幾重にも包帯を巻かれたこの身体。
全部全部、先日獣に襲われた傷だ。
あれからもう三日は経ったか。
意識を取り戻すのに一日。
傷のせいで床から起き上がれないで一日を過ごし、医者が許さないのでもう一日床についたままだった。
甲冑を身にまとってなかったら、最後の一撃は間違いなく腹を裂いていた。
今日も押し留める医者に無理を言って出てきたのだ。

今日こそは、あの獣を狩ってやる。
この奥州筆頭伊達政宗にこれほどの傷をつけ、尚且つ逃げおおせたあの獣。
人間でさえ俺を傷つけるものは少ない中で、重傷を与えたのだ。
甲冑尾も易々と抉る爪。
どれほど強いのか、あの獣は。
闇を纏ったような漆黒の天鵝絨の毛皮、怪しさと妖艶なる輝きを放つ紫水晶の瞳、しなやかに宙を舞い地を駆ける体躯、白く輝き鋭く肉を斬り骨を断つ牙と爪。
山猫のような見た目に反して、仔馬ほどに大きい矮躯。
いつか話に聞いたことがある異国の獣、豹、という名が頭をよぎる。

あれを放っておけば、間違いなく多量の死者が出るだろう。
現に先だって部下に調べさせたら、近隣の村ではよく行方不明者が出るという。
あの獣の仕業だと、すぐわかった。
これ以上あの危険な獣を放ってはおけない。
狩らねば、これから死者は増える一方だ。
幸い今は向こうも手傷お負って満足に動けぬはず。
今が絶好の機会。

 

「待ってろよ、beast。お前は俺が必ず殺してやる」

 

 

 

 

15
2009/05/20

 

 

 

 

 


俺はあの日獣と対峙した場所に来ていた。
なにか獣を探す手がかりがあれば、と思ったのだが、当たりだ。
血の跡が、点々と続いている。
その後を追えば、獣の塒に辿り着けるのだろうか。

血の後を追えば、一軒の民家に行きついた。
村はずれにぽつりと佇む民家は、生活感がまるでない。
もしやここも獣に襲われたのだろうか、と嫌な予感がよぎる。
けれどもしまだ中に獣がいたら、と冷静に考えて、静かに戸を開けた。

 

「!」

 

板の間には真っ赤に染まった布団と、女が素肌に斑に染まった包帯を巻いただけの恰好で蹲っていた。
獣が潜んでいないことを確かめてから駆け寄ると、女は死んだような顔色をしていた。
かろうじで、息はある。胸が上下して、呼吸し、脈打っているのがわかる。
抱き上げるとき、固まった血のせいで布団と女の肌がくっついていて嫌な感触がした。
体中に巻かれた包帯は、即ち傷の多さだ。
この出血の量は、それだけ傷が深いということ。
女の髪を払って顔を見ると、女はまだ女でなく少女だった。
こんな少女が、何故一人で。
それにこの怪我は何事か。
もしや獣に襲われたのだろうか、と考える。
一応止血まがいのことはやっているが、こんな大雑把な止血だとあまり意味をなさないだろう。
いつからこうしていたのだろうか、とりあえず、早く医師に見せなければ。
抱き上げた身体は、あたたかくも冷たくもなかった。
そして、抱き上げた瞬間に少女が身じろいだ。瞼が動く。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 

 

 


16
2009/05/21


 

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