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KLM

KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。

お子さま行進曲 マルコ編その1

 


休暇中だった。
大きな街のある島について、船の見張り役にも当たらなかった。
幾らかの小銭だけポケットに入れ、琴里は意気揚々と上陸した。
船の上も好きだけど、地面も好きだ。
仲間とは違う街の人が沢山いるのも好き。
賑やかな街並みも好き。
琴里は散策が好きだった。
この日も初めて上陸する街だったので、いつものように一人でふらふらと街をさまよっていた。

街を一通り歩いて、店を覘く。
部屋はいつも散らかっていて怒られるからあまり物を買わないようにしているけれど、それでも面白そうなものがあったら買ってしまう。
この日も様々な物が琴里に買ってと訴えたが、手持ちの無さと後にマルコに怒られることを考えてなんとか我慢した。
辺りを見回すと丁度昼時らしく、露店から客引きの声が上がっている。
良い匂いが立ちこめ、琴里もつられて肉とチーズのたっぷり挟まったサンドイッチを買って頬張る。
平和で平凡で平穏な町だった。

一日をかけてゆっくり歩いて街どころか島を見て回っていたら、いつの間にか夜になっていた。
数日停泊すると言っていたので、夜は船に戻っても街に泊まってもかまわない。
無駄遣いの多い琴里だが、与えられている稼ぎが多いため余裕がある。
けれども船の自室があるので外泊はあまりしない。
どこか他人行儀なホテルの部屋はどれだけ豪華だろうと落ち着かなかった。
帰ろう、と港を目指そうとした時だった。

遠くだった。

暗がりだった。

でもあれは。

 


*

 

「ただいま」

「いや、ここ俺の部屋だし」

 

エースのツッコミを無視し、琴里はエースのベットに直立のまま倒れ込んだ。
どこかぼんやりしている琴里をいぶかしげに思ったのか、おそるおそるうつ伏せで倒れているのか寝ているのか判断しかねる琴里に近寄る。

 

「どうした、腹でも減ったのか」

「んー、むしろ胸がいっぱい」

「胸ェ?お前なんもねぇじゃん」

「………エースはばかだから…」

「ばかだからわかんねぇって!?」

 

琴里はそれ以上エースと言い合うことをせず、枕に顔を埋めた。

 

「エース、今日、ここで寝ていい?」

「なんかあったか?」

「わかんない」

 

枕から顔をあげないので、琴里の声はくぐもっていた。
エースは琴里が寝そべっている横に腰をおろし、動かない彼女を見た。
見たところ怪我はない。
空腹ではないと言っていたので、それは信じることにしよう。
琴里は嘘をつかないはずだ。どこまでも素直な彼女だから。
なら、病気か。
首筋に手を当ててみたが、己の能力の所為で体温はわからない。
脈を測ると特に早いわけでもない。

 

「腹でもイテェのか?」

「ううん、どこも痛くないよ」

 

眠いだけ、なのだろうか。
それにしては元気がないように感じる。
いつも元気いっぱいな琴里なだけに、どこか心配だ。
明日になると、どうせけろっとしているのだろうけど。
喧嘩の相棒がいないと、エースの調子も出ない。
こんな時どうしたらいいのかわからないが、記憶の糸を手繰り寄せかつて弟にしていたように頭を撫でた。

 

「ベットは貸してやる。貸しイチな」

「うん」

「早く元気出せよ」

「………うん」

 

琴里が返事をしたのを聞いて、エースは部屋を出た。

 

 

 


マルコ編すたぁと
2010/09/25


今までのオバニズム形式じゃなくて、こっから長編になります。
長編といっても短い、はず。10話もいかない、はず。
ごめん、正直先の展開考えてない^q^
 

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