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KLM

KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。

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海軍編、赤髪邂逅編

勢いでずだだだだっと書いた海軍編シャンクスとの邂逅編。
正直ちょっと行き詰った。
だってこれ、どうやって今の一緒に暮らしてるみたいなところまでもってくんだよ。無理じゃね?????
というか、思いのほかマキノちゃんが出てきてシャンクスxマキノっぽい雰囲気が出たと思えばシャンクス→マキノ→主人公みたいな感じのガチ百合感出てきて困ってる。そこらへんはまだ乗っけてないけどね。今回は前編後編でいう前編。




デフォルト:琴里








「琴里ちゃん、海賊が!」



その一言に、琴里は立ち上がった。






2017/09/07







琴里の故郷、フーシャ村は東の海のなんの変哲もない平和な村だ。
村から山一つ越えたところには大きな町があり、そちらは賑わっているが、フーシャ村まではその喧騒も聞こえてこない。
船の停泊場所も漁に出る人たちの小さな船を泊める程度で、大きな港もない。

そんな静かな村に、海賊が来てしまった。
荒事とは無縁の村なので、海軍の駐在所があるわけでもない。
揉め事には村長が出向くような、平和な村なのだ。
その為、琴里やその父親であるガープが海軍勤めなのは村人全員が知るところなので、二人が帰ってきている場合は、二人に解決を願うのが常となっている。



「上陸は?」

「まだ。沖で海賊旗を見たって人がいるの」

「どんな旗だったか覚えてる?」

「えぇ、描いてもらったわ。これよ」



琴里はコルボ山にある自宅から、足速に村へ向かう。
休暇中の身だが、フーシャ村の一員として出来る事はしたい。
大抵の荒事は解決できるだけの力量は持ち合わせているが、



「げっ」

「どうしたの?」

「ほんとにこれ?見間違いとかじゃなくて?」

「え、えぇ。たぶんあってるとは思うんだけど…どうかした?」



今回に限り、マジかーと頭を抱えた。
隣を歩くマキノが、不安そうに琴里を見る。
ぐしゃりと握りつぶされた紙に書かれていたのは、ドクロの右目に三本の傷があり、その背後には二本の刀を背負っているマークだった。







2017/09/07







母親である琴里とマキノがあわてた様子で出ていって、なにかよくないことがあったのが、エースにもわかった。
しかも、マキノは『海賊』がどうのこうのと言っていた気がする。
海賊というのは、悪いやつらだと母親が言っていた。

『絶対家から出るな、おとなしくしてろ』

そう言いつけられたが、悪いやつらなら倒さねばならない。
少しは強くなったというところを母親に見せたい。
にっと笑って、壁に立てかけてあった鉄パイプを握りしめ、外へ飛び出した。





2017/09/07







「うーわー、マジであいつらか~~~」

「そんなに強い海賊なの?」

「あたしだけじゃ無理だなぁ」



望遠鏡をのぞきながら、海賊旗を確認した琴里の言葉にそんな、と他の住人から悲鳴が上がる。
琴里の強さは昔から知っているし、時折届く新聞でもその華々しい活躍は村人たちの誇るところである。
その琴里が無理だと言えば、この村の戦力では海賊に勝てないという事だ。
資財を渡すことで命が助かるのならいくらでも差し出すが、村に金品は少ない。
女子供を要求されれば、戦うしかなくなってしまう。
どうしたものか、と村人が落ち込むが、琴里が大丈夫、と声を上げる。



「たぶん、あいつら何もしないと思う。飲み食いする時もお金払うだろうし」

「なんだ、平和的な海賊なのか?」

「うん、あたしが知る限りはね。海賊だからなにするかわかんないけど、何かあったらまた呼んで」

「本当に、殺されたり乱暴されたりしないかねぇ」

「そんな噂は聞かないからなぁ」



琴里ののんきな態度に、村人たちもほっと胸をなでおろした。



「ちなみに、なんて海賊なんだい?」

「…赤髪海賊団。船長はシャンクス」







2017/09/07







琴里の宣言通り、上陸してきた赤髪海賊団は平和的な海賊だった。
村人と揉め事も起こさないし、品物は奪うのではなくきちんと金を払う。
気さくで人当たりもよく、子供達なんかはすぐに懐いて冒険譚を聞かせろと自ら海賊たちに会いに行く始末だ。



「琴理ちゃんが勝てないっていうから、どんなに怖い海賊さんかと思ったわ」

「その琴里ちゃんっていうのは?」

「うちの村出身の海兵さんなの。すっごく強いのよ」



にこにこと楽しそうに話すのは、村で唯一だという酒場の女店主、マキノだった。
昼間から、というか、酒が飲める場所がここしかないということでシャンクスも昼間から酒場に入り浸っている。
物資の調達とひと時の休息という事で立ち寄ったこの島の村は、なかなか居心地がいい。
ただ、村人との会話に出てくる『琴里ちゃん』というのが気になる。
同じ名前で、同じく海兵である人物を一人知っているが、まさかと首を振る。



「へぇ、その琴里ちゃんっていうのはどんな子なんだ?」

「内緒。あなたは海賊だから、琴里ちゃんの事は教えてあげない」



ふふ、と笑うマキノにシャンクスもつられて笑う。
確かに海兵のプライベートは秘密にしておくに越したことはない。
多くの人を救ってきたが、多くの恨みも同時に買っている。
仲間の仇討だ、と息巻く連中は多い。
周囲の人間を危険に巻き込まない為にも、海兵自身の事は口外しないが身の為だ。
そのことをきちんと理解し、口止めをしている琴里ちゃんとやらもなかなかすごいし、秘密を守るマキノもさすがだと思う。
そんな世間話に花を咲かせつつ、酒を飲んでいる時だった。



「海賊がいるのはここか!?」






2017/09/07







「エース!どうしたの?」

「悪い海賊がいるんだろ!?オレが退治してやる!!」

「もう、エースったら。悪い海賊なんかいないわ」

「うそだ!だってそいつ海賊だろ?」

「あら、世の中にはいい海賊さんもいっぱいいるわよ、ねぇ?」

「そうだぞ、俺はいい海賊さんだ」



突如飛び込んできた子供にシャンクスがわざとらしいほどにっこり笑ってやると、子供はぎっと睨みつけてきた。
手には武器らしい鉄パイプ、やんちゃだなぁと思う。



「海賊はみんな悪いやつだって、かーちゃん言ってたぞ!」

「うーん、でも、エースはこの人を見てどう思う?悪いことしてる?」

「昼間っから酒飲んでる」

「それは他の大人だってしてるでしょう?この人は今、なんにも悪い事はしてないわ」



マキノが諭し、エースが黙り込む。
ちゃんと子供を叱れてえらいなぁ、とシャンクスはもう一口酒を飲んだ。

確かに海賊と言う存在は悪だ。
名乗るだけで犯罪者となる因果な職業だが、実際全てを悪と決めつけるのは強引だ。
自分たちのように、奪う相手を考え一般人には手出しをしないまともな奴らだって多くいる。
まぁ、善か悪かでいえばどうしようもなく悪なのだけれど。

もう一度エースと呼ばれた子供を見てみると、一応はおとなしくなったもののいまだ納得いかないといった様子でシャンクスを睨んでいた。
しょうがない子ね、とマキノはエースにジュースを出す。



「海賊さんはおとなしくお酒を飲んでいます。エースはお行儀よくジュースが飲めるかしら?」






ふふっと笑うマキノは、しっかりとしたいい女だなぁと思った。
2017/09/07






『というわけで、エースがうちに来てるんだけど』

「あんのアホたれめ!!家でおとなしくしてろつったのに!!」

『迎えに来る?海賊さんもまだいるけど』

「行く。どうせ帰ってこいつっておとなしく帰ってこないだろうし」

『あ、じゃあついでに今日のうちの晩ご飯シチューなんだけど、持って帰る?』

「もらう!やったー!!」

『ふふ、じゃあ待ってるね』



電伝虫でマキノとの通話が終わり、琴里は唯一持って帰ってきている仕事道具である刀を腰に差す。
赤髪海賊団とは戦場でよく顔を合わせているので、出来ればこの村で会いたくはなかったが、エースが殴り込みに行ってしまったのなら、迎えに行かなければ仕方がない。
万が一にでもエースに何かあれば、その時は。



「エースに何かあったらただでは済まさん」

「そんで、エースもぶん殴る!!!」






2017/09/07










「でな、その島付近では雷が雨のように降ってくるのさ」

「スゲー!どうやってそんな中船で進むんだよ!!」



琴里がマキノの店に着いた時、中からはエースとシャンクスの楽しそうな声が聞こえ、一気に気が緩んだ。
無事でよかったという安堵と、家から出るなと言う約束を破った事への怒りが同時に襲ってくる。
一旦深呼吸し荒ぶる気持ちを落ち着かせ、現状を整理する。

相手は赤髪海賊団船長、シャンクスだ。
これまで幾度となく戦場で斬り合ってきた相手であり、今の琴里ではおそらく敵わない相手でもある。
万が一にでもエースを人質に捕られでもしたら、助け出せるか分からない。

シャンクスは海賊だ、と仕事モードに切り替える。
いつもと違って、出来るだけ暴れない様に。
勝てないなどとは弱気は隠し、自信をみなぎらせる。
からんとベルを鳴らしながら、堂々とドアを開け店内へ入った。



「御機嫌よう、赤髪。こんな所で出会うなんて、今日は人生最悪の日だな」

「お前…!」

「さて、今の貴様に要はない。見逃してやるからとっとと出て行け」






2017/09/07







シャンクスが腰の刀に手を伸ばそうとしたが、先に臨戦態勢に入っていた分琴里の方が速かった。
喉元に刀を突きつけられる形となり、シャンクスは両手を上げる。



「わたしは出て行け、と言ったのだがな」

「なんでお前がこんな所に居るんだよ」

「なぜわたしが貴様に説明せねばならない?今回だけだ、今回だけは見逃してやる。これが最後だ、出て行け」



普段の琴里なら間違っても言わない台詞にシャンクスは驚く。
海賊であれば即切り捨てるはずの琴里が、見逃す?どういう風の吹き回しだ、と琴里を観察してみればなるほど。
軍服を着ていない、休暇中なのだろうか。
休暇中だとしても見逃すという行為に違和感がぬぐえないが、一応は納得する。
海軍の鬼も休むことがあるんだな、とこんな場面ながらに思ってしまう。



「わかったよ、出て行きゃいんだろ」

「もちろん無銭飲食なんて、わたしの前で悪事を働かないだろうな?」

「俺を馬鹿にすんなよ。マキノさん悪かったな、エースも怖い思いさせちまった」



修羅場に慣れていないであろう二人を振り返れば、エースはまさに戦々恐々といった様子で震えていたが、マキノは?
マキノは変わらずにこにこと笑っていた。
戦い慣れしているようには見えなかったが、肝が据わっているのだろうか。
少し違和感を感じつつもシャンクスはゆっくりと立ち上がり、金を払う。
ポケットに手を入れる際、琴里が切っ先に力を込めたのでひやりとした。
外に出ようと扉まで行くと、やっと刀が首元から下される。



「疾く、去ね。二度とこの村で顔を見せるな」

「生憎と暫くこの村に滞在するもんでな」



最後にもう一度だけ振り返ると、マキノが手を振ってくれていた。
ひらりと手を振り返し、今度こそ店を去った。





やべェかーちゃんまじこえぇってなってるエースと、琴里ちゃんかっこいい!ってなってたマキノちゃん。
これは赤髪xマキノなのか…?いや違うはず。
2017/09/07







「海軍琴里ちゃん、久しぶりに見たわ。やっぱりかっこいい!」

「この村で仕事はしたくないんだけどね」

「何事もないのが一番よね」



シャンクスが去ったことで安心したのか、戦闘にならずに済んで、本当に良かったと息を吐いた。
気を利かせたマキノがオレンジジュースをテーブルに置く。
緊張でのどが渇いていたのか、ありがたく一気に飲ませてもらう。
一息ついたところで、くるりと椅子を回転させて縮こまっていたエースに向き直った。



「で、エース。なんであんたがここにいるの」

「か、海賊やっつけてやろうとおも…て」

「あたしなんて言った?」

「でもっ!!」

「家から出るなっていったでしょ!?海賊がうろうろしてて危ないから!!!」



ごんっ、とエースの頭にゲンコツが炸裂する。



「ってー!!なにすんだよ!!」

「あんたが約束破ったからだ!」

「オレだって強くなったし!!」

「あたしに勝ってから強いって言え」

「かーちゃん大人じゃん!ずりぃし!!」

「あんたが戦おうとしてた海賊だって大人だ!アホたれ!!」



ぎゃいぎゃいと親子喧嘩が始まって、微笑ましいなとマキノが笑う。
二人を見ていて飽きないけれど、このままだといつまで経っても終わらなさそうなので、そろそろ間を取り持とう。



「まったくもうっ、二人ともいい子にしてないとシチューあげないわよ!」

「「ごめんなさい!」」



声をそろえて謝る様子に親子っていいな、と思う。



「エース、琴里ちゃんはエースを心配したのよ。悪い海賊だっているんだから、もしエースが怪我したら琴里ちゃんきっとすごく悲しむわ」

「琴里ちゃん、エースも琴里ちゃんに成長したところ見せたかったのよ。わかってあげたら?」



ちらりと琴里とエースが顔を合わる。



「かーちゃん、心配した?」

「するに決まっとるわ、アホ。もしエースが海賊に捕まったりしたらどうしようとか、助けられなかったらどうしようとか、すっごい考えた」

「ごめん、なさい」

「あたしもごめん、ちゃんと出たらダメな理由説明しなかったもんな。気になったね」



お互い反省したようで、琴里が両手を広げるとエースがそろそろと近づいて、母子が抱き合う。
マキノは一人身なのでまだわからないが、この二人の関係性がすごく羨ましい。



「ん、仲直り出来てえらいえらい!」

「やったー、マキノちゃんに褒められた」

「オレえらい!?」



二人がこうして店に来てくれると、マキノも家族の一員になったようで幸せだった。
琴里もエースも、大好きだ。







2017/09/07





「琴里ちゃんか。あの子はいい子だよ。よく手伝ってくれるし、いつも元気だし。なんだい、あんた琴里ちゃんに気があるのかい」

「あんた海賊だろ?海賊が琴里ちゃんに何の用なんだ?悪いけど他あたってくれや」

「マキノちゃんと仲がいいよ。幼馴染って奴だな。なんでも昔山賊に襲われてたところを助け助けられ、仲良くなったとかなんとか。ほら、こんな小さな村じゃ子供なんて少ないだろ?だからなおさら仲良くなってな。マキノちゃんがお姉さんで、琴里ちゃんがいろんなことを教えてもらってたなぁ。逆に琴里ちゃんが活発だから、マキノちゃんが付き合わされてえらい目にあうこともあったな。そんな二人がずっと仲いいのがちょっと謎だよな」

「琴里ちゃん?あぁ、よく来るよ。昔からでね、昔はガープさんにつれられてよく来てたよ。あの頃からよく食べててね、子供ながらにすごいと思ったよ。あんなにうまいうまいってがっついてくれたら作りて冥利につきるってもんだね。最近は子供と一緒に来てるね。親子共々よく食べるなぁと感心するよ。子供の父親?見たことないなぁ。琴里ちゃんもそうなんだけど、あそこは気付けば子供が増えてるんだよね。確かに最初はちゃんと息子さんがいたんだけど、途中から琴里ちゃんが増えてね。うん、本当にある日突然娘だって紹介されてね。当時は村中で話題になったなぁ。ガープさんの隠し子じゃないとかね。それで気付けば海兵なるって村出て行ったきりだったろ?たまーにガープさんと戻ってきてはいたけどね、今みたいにしょっちゅうじゃなかったよ。そしたら琴里ちゃんもね、ある日突然ガープさんと帰ってきたと思ったら子供抱いてて、この時も話題になったよ。なにしろ琴里ちゃんまだ小さかったからね。十歳とかじゃなかったかな。もう少しいってたかもしれないな。とにかく小さい琴里ちゃんが赤んぼ抱いてたから、いろいろ噂がたっちゃってね。まぁ人の噂も七十五日って言うじゃない?いろいろあったけど琴里ちゃんは琴里ちゃんだったし、子育ても大変そうだったからみんなで助け合ってね。今じゃ子供も元気に育ってるし、よかったんじゃないかな。だから誰も父親は知らないんだよ。海軍でも出世してるみたいだし、子供もいて楽しそうだよ。このままこの村にいてくれたら、この村も安心なんだけどなぁ」

「あの子は不気味な子だよ。昔は山で山賊と暮らしてたって聞いたこともあるしな。実際ガープさんもどっかで拾ってきたんだろ。よくあるじゃないか、戦場で親と死に別れた子供を憐れんで拾ってくるって。ガープさんも情に厚いから、見捨てておけなかったんだろうな。どこか人間離れしてるっていうか、情緒が育ってないっていうのかね。海軍へ行くって言いだしたときはほっとしたよ。まともなにんげんになるんじゃないかって思ってたんだけど、あの子供がいるだろう?あの子供、あの子が十五歳くらいの時の子なんだよ。十五歳の子供が子供を産むって、海軍で何してたんだろうな。まったく困った子だよ」

「元気な家族だよ。エースくんがまたやんちゃだろ?たまにこらー!って怒鳴る声がここまで聞こえてくるんだよ。心配になることもあるけど、仲がいいだろ、あの二人。エースくんも琴里ちゃんが大好きでね、琴里ちゃんもある種の親馬鹿っていうか、エースくん大事!っていうのが伝わるからね。いい家族だよ」






2017/09/07








「つっかれたー!!」

「かーちゃん、シチュー!シチュー食おう!!」

「ん、温めなおすからお皿用意しといて」



はーい、と元気よく駆け出すエースの姿を見て、よかったと本日何度目かの息を吐く。
もしもやってきたのが別の海賊で、エースが捕まっていたらと思うと本当にぞっとする。
エースはなまじ腕っぷしに自信があるので、相手の力量を見誤り勝てない相手にケンカを売ることもままあった。
大体の場合相手はコルボ山に住む獣で、途中でやばいと感じたエースが逃げるなり叫ぶなりして琴里に助けを求めるのでなんとかなってきたが、海賊はわけが違う。
獣と人の悪意は比べるまでもない。
赤髪海賊団がいつまでいるかわからない今だからこそ、しっかり伝えておく必要がある。
でも今は。



「もーやだー、なんでよりによってあいつがくるかなー!」

「かーちゃんあの赤い人知ってんのか?」

「知ってるも何も、なんかよく同じ戦場で会うのー」

「強いのか?」

「昔はあたしのが強かったけど、今は向こうのが若干強いかなー」

「マジで!?かーちゃんより強い人間が存在すんの!?」

「するー。するする、たまにやられて逃げてるし」

「すげぇ…」



愚痴らせてもらおう。
だって、今日だけですごく疲れた。
シチューを火にかけ、焦げ付かないようにぐるぐるとかき混ぜる。
何が悲しくて休日で家でのんびりしようと思っていたら宿敵といえる赤髪海賊団と遭遇しなければいけないのか。
しかもしばらく村に居座るという。
会いたくない、会ったとしてもどうすることもできないので非常に気まずい。主に琴里が。

海軍としての自分と、母親としての自分が全く別物であることは自分でも把握している。
公私混同は避けるべきだし、なにより地位ある者として下の者の手本となるような人間であらねばならない。
そういった気構えで仕事に臨んでいるからなのか、仕事中は常に気を張り真面目でいるつもりだ。
逆に私生活となれば割とのんきだという自覚があるし、もっと言えば単純バカだと自分自身で思っている。

仕事中と私生活で心構えが違えば、口調も顔つきも違ってくる。
フーシャ村の人たちなら普段の琴里も海軍の琴里も知っているからいいが、厳しい一面しか知らない面々はきっとバカな自分を見たら落胆するだろう。
一応部下を持つ身として、部下から見放されるのが立場上一番まずい。
仲間内だけで済むのならまだいいが、その噂が海賊に流れようものならこれまで積み上げてきたイメージが崩れ、恐れが嘲笑に変わるだろう。

向こうは知ったこっちゃないだろうが、これでも海軍の鬼として名を馳せているのに、休日は普通の主婦をやっているだなんて知れたら、これまで積み上げてきた鬼のイメージがた落ちどころではない。
今回はなんとか威厳を保てたはずだが、次回からはどうなるかわからない。
うっかり買い物をしてる最中にでも遭遇してしまい、噂が立とうものなら…。
温め終わったシチューをエースが用意した皿に盛り付け、ついでに買ってあったフランスパンも切ってテーブルに並べる。



「しばらく買い物行けない…」

「なんで!?海賊がいるからか!」

「そー。あたしは海賊と会いたくないし、エースは危ないからお使い任せられないし」

「オレ大丈夫だから!!」

「だーめ」

「あの赤い人も優しかったし」

「騙されるな、あいつあたしより強い」

「マジで!?」

「あれで赤髪海賊団船長」

「うおー、すげぇ!!!」



興奮するエースを見て、これはまた村へ行くかもな、と危ぶむ。
しかしこの聞かん坊にダメだといっても通じないのは痛感しているのでこれから暫くのことを考えると、休日返上で海軍に帰りたくなった。



「エースぅ、おかーさんどうしたらいいと思う?」

「かーちゃん最強だろ!!どうとでもなるって!!」






励まされるって、勇気出るなぁ。
2017/09/07






久しぶりにめっちゃ一気に書けた。
楽しかった。

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