忍者ブログ

KLM

KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。

その一言が、やる気につながる

だって!言われたら!!調子にのっちゃうじゃない!!!褒められたらうれしいわよ!!!!
そんなわけで、このお話の続きのような、そうでないような…。
北さんに恋する女の子のお話です。

(ネームレス)






私と北さんの出会いは、1年前、入学式の日までさかのぼる。
ぴかぴかの新入生だった私は、ちょっとお手洗いに行っている間にクラス移動で置いて行かれた。この後入学式があるからトイレへ行っておこうと思ったのに、まさかトイレへ行っている間に置いて行かれるとは。まぁいいやと歩き出そうとして、ハタと気付く。『体育館の場所、わかんない』
入学したてで体育館がどこにあるかもわからず、他のクラスを覗いてみても誰もいなくて、入学式に出れないかもしれない、どうしようどうしようと泣きそうになった。誰かいないかと、何もわからない校舎の階段を駆け下りる。だって、体育館は大体別の建物だから、一階に行けば少しでも近づけると思ったんだ。
そして階段の踊り場でぶつかったのが、北さんだった。

「階段で走るな、前を見ぃ。危ないやろ」
「ご、ごめんなさい」
「1年か。入学式もうそろそろやろ。それで慌てとったんか」

入学式がもうそろそろ始まる。
その言葉にサァっと顔が青くなる。どうしよう、間に合わないかもしれない。もしかしたら、思った言葉を口に出したのかもしれない。立ち尽くしていた私に、手が差し出された。
行くで、と差し出された手をよくわからないまま握る。そのままぐんと引っ張られて、二人して駆け出した。

「どこに行くんですか?」
「体育館や。送ったる」
「さっき走るなって」
「でも、のんびり歩いて入学式遅れてもあかんやろ」

ちゃんとぶつからんよう走っとうから、しっかりついてきぃや。
体育館周辺まで来ると、担任の先生が大慌てで駆け寄ってきて「置いてってすまんかった!」と平謝りされた。「じゃあ、いい学校生活を」声が聞こえて振り返ると、彼はもう歩き出していて、私は担任に促されて体育館に入って、お礼もありがとうも何も言えなかった。
ひらひら舞い散る桜の季節の思い出。

「とゆーのが、北さんと私の出会いなわけよ。めっちゃドラマチックじゃない?少女マンガじゃない?こんなの好きになるしかなくない?」
「ベタベタすぎて引くわ」
「うるさい、私の思い出をけなすな」

げしっと宮の膝裏を蹴ったら、なにすんじゃボケ、とお尻を蹴られた。倍返し過ぎて酷い。私が男だったらもっと強く蹴れるのに。てゆーかセクハラだ。
宮が『なんで北さんが好きなん?やっぱ顔?』とか失礼なことを言ってくるから話してあげたのに。一周回ってつまらんわ、なんて言われてしまった。バレーバカの宮にはこのステキな出来事が理解できないに違いない。もはや奇跡といっても過言ではない素晴らしすぎる出会いなのに。

「はー、むり、北さん好き」
「お前には無理やけどな」
「いいでしょ、好き好き言う分には」
「迷惑かけんなや」
「わかってるって」
「そーやって身の程を知っとるだけ、えらいって褒めたるわ」
「はぁ?キショ」
「あ゛?キショいってなんやねん、キショいって」

ぎゃーぎゃー宮と騒いでいたら、チャイムが鳴る。イーっと睨んでから席について、窓の外を眺める。
いつかこの恋を青春の一ページとして昇華する日が来るのだろうか。大切で大事で、きらきらした私のとっておきの思い出。北さんはもう3年生で、今年卒業してしまう。案外、その日は近いのかもしれない。


2020.4.20
1年生のクラスは1階では?という常識は無視するものとする。
実はお礼を言うために北さんを探し回ったお話も書いていたのですが、うまいことまとまらずにやめました。その時また北さんがいい感じのこと言ったので、本格的に主人公が惚れたみたいです。
たぶん!もう続かない、続きません。このお話は北さんが登場したら壊れてしまう気がする。

拍手

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]