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KLM

KLMは始まりのABC、終りのXYZの中間に位置する途中経過という意味です。 でも、理系の管理人なのでK殻L殻M殻という意味もあります。

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しゃばけ

魔女inしゃばけ
これと(1)→http://abcklmxyz.blog.shinobi.jp/Entry/359/
これの(2)→http://abcklmxyz.blog.shinobi.jp/Entry/360/
続き。オリキャラ注意報





「わたくしたちの正体、ですか。わたくしよりも、刄墨の話をした方がよさそうですね」



刄墨は物凄く顔をしかめて、姐様、と何かを訴えるようにわたくしの服の裾をひっぱりました。
ちなみに、今回は時代考証が古いので、ちゃんとそれに合わせてますよ。
まさかこの時代にいつもの魔女っ子衣装なわけないでしょう。
今回は着物ですよ。まぁ、喪服のような真黒ですけどね。
おっと、話がそれましたね。



「刄墨、渋っても仕方ないでしょう。いつかは話さなければならないことです」

「いや、嫌なんだったら…」

「坊ちゃん。せめて相手の正体くらい知っておきませんと」



一太郎さんが気遣ってくださいますが、仁吉さんはそうもいかないよう。
まぁ、そうでしょうね。
わけのわからんちんちくりんが大事な若旦那と一緒に居るんですから。



「刄墨、話しますよ」

「………姐様の、御心のままに」



では、少し昔話をしましょうか。
いえ、昔話というほど昔の話ではありません。
つい先頃、と言った方が正しいのでしょうね。
ある町に一つの墨壺がありました。それはそれは美しく、優美な墨壺がありました。

ここで思い当たる節があるのか、仁吉はぴくりと眉を動かす。

もうじき神の末席に入ろうという墨壺は、その日をとてもとても待ちわびておりました。
けれども愚かなる人の痴情で、夢見る墨壺はその身を穿たれてしまいました。
愚かなる人を呪い、己の不遇を嘆いた墨壺は、それでも神の座を諦めませんでした。
損なわれた身体を治す万能薬があると聞き、半死半生の墨壺は動きました。
けれど、探せども探せども薬は見当たりません。
墨壺は消え行かんとする己の命の短さに焦り、己の視界を狭めます。
そして焦る墨壺は、人を殺めました。

はっと一太郎が刄墨を見やる。

けれども薬は見当たりません。
急がなければ死んでしまう、本来ならばもうじき神になれたのに。
墨壺は我を忘れ、狂いました。
人を殺め、薬を求める。
そしてようやく薬を見つけました。
墨壺は歓喜し、薬をくれろ、と頼みました。
けれど薬はすでに服用され、あるのは残り香でけでした。
墨壺はそのことに気付きません。
薬はやれぬ、ここにはない、と言われても、引き下がる事が出来ませんでした。
そしてまたもや、墨壺は短慮を起こしました。

刄墨がぐっと手を握りしめる。

町に火を放ち、それに乗じて薬を奪い去ろうとしたのです。
けれども墨壺は返り討ちにされ、今度こそ本当に、この世から消え去りました。



「そして、その哀れなる墨壺は彼の世と此の世の狭間で、何の因果かこのわたくしと出会いました。わたくしは、墨壺にもう一度生を与え名を与え、この世につなぎ止めたのです。それが、この刄墨です」



わたくしが話し終えると、皆さん神妙な顔をしていました。
特に、刄墨はいつの間にかわたくしの着物の裾を強く握り、背に顔をうずめてます。



「これで刄墨の紹介は終わりです。何かご質問があればお答えいたしましょう」

「刄墨とやらは、本当にあの墨壺なのかい?」

「えぇ。ですのでここに来るのを本当に嫌がって、連れてくるのが大変だったんですよ」

「若旦那を殺すつもりでしたらこの仁吉、相討ってでも止めてみせます」

「そのつもりはありません。刄墨は殺してやる!って言ってきかなかったんですけどね、そこはわたくしが何とか言い聞かせましたので、ご心配なく」



ここに刄墨を連れてこさせるにあたって、わたくしも考えたのですよ。
そのいち、一太郎さんはもとより、長崎屋の人に危害を加えない。
そのに、皆と仲良くすること。
この二つをよーく言い聞かせましたからね。



「なにがなんでも、貴方達と刄墨を会わせたかったんです」

「姐様、どうしただよ!今さらこんな奴ら、顔も見たくないのに!!」

「そうです。一太郎坊ちゃんに万が一のことがあってはどうしてくれるんだい!」



「刄墨、静かに」

「仁吉、とりあえず話を聞こうじゃないか」



互いに苦労しますね、と一太郎さんに微笑めば、一太郎さんもこちらの意をくんでくださったのか苦笑しておられました。



「刄墨をこちらに連れてきたのは第一に、和解してほしかったのです。恨みを持ったまま生きるということは、辛くて悲しいですからね」



一太郎さんはすまなさそうな顔をしてくださいました。
よかった。
刄墨のことを、哀れな墨壺のことを覚えていてくださったんですね。
そして、気に病んでてくださったんですね。



「刄墨、一太郎さんと握手しなさい。そして、仲良くしなさい」

「い、嫌だよ姐様!どうして!!どうしてこんな、俺を殺した奴と!!」

「刄墨、元を正せば、貴方は悪くありません。悪いのはいつの世だって人間です」

「だったら!」

「でもね、刄墨。貴方、人を殺してしまったじゃないですか」

「それは!人間が俺を殺すから!!」

「刄墨、貴方はわたくしが嫌いですか?憎いですか?」

「まさか!姐様は俺を救ってくだすった、たった一人の尊いお方だ!!」

「だったら、いいじゃないですか」

「なにがです!」



「わたくしも人間です。わたしが嫌いじゃないんだったら、一太郎さんのことも好きになれますよ」







長くなったからぶつ切り。
書きたかった話だから書けて満足!!
刄墨/はぼく という名前は、まんま墨壺から来てました。
この後見事魔女に言いくるめられた刄墨ちんは、渋々一太郎坊ちゃんと仲良くなりましたとさ!
でも、仁吉と佐助とは、双方の都合により、いたずら坊主と大人げない大人という関係です。まぁ、仲がいいってことだよ!

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